
7月17日から北アイルランドのロイヤルポートラッシュゴルフクラブで全英オープンが開催される。日本勢は、松山英樹、星野陸也、金谷巧実、今平周吾、阿久津未来也、河本力の6名。
この中でただ一人海外メジャー初出場となる阿久津は、5月29日から開催された、上位3名に全英オープン出場権が与えられるミズノオープンで優勝した。
阿久津は飛距離の面でハンデを背負うタイプだが、ロイヤルポートラッシュ開催となった2019年大会で予選を通過した日本勢は浅地洋佑と稲森佑貴のみで、2人とも飛距離の面ではハンデを背負うタイプ。
松山英樹ら米ツアー主戦場組や、海外メジャー出場経験がある日本勢だけでなく、阿久津にも注目したい。
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■パーオン率11位
阿久津はドライビングディスタンスが今季現時点(6月29日時点)で72位だがパーオン率が11位タイ。
パーオン率を高めるには飛距離が出る方が有利である中で、飛距離の出る方ではない阿久津が高水準のパーオン率を出せているのは、2打目の長い距離のショット精度が高いから。パー5の2オン率13位も、それを示している。
以下は、パーオン率上位20名のドライビングディスタンス順位。パーオン率上位10名の中でドライビングディスタンス上位50名に入っていないのは2名だけ。

パーオン率上位20名のドライビングディスタンス順位
以下は、パー5での2オン率上位20名のドライビングディスタンス順位。パー5での2オン率上位10名の中でドライビングディスタンス上位50名に入っていないのは1名だけ。

パー5での2オン率上位20名のドライビングディスタンス順位
■スピンコントロール
長い距離のショット精度が高いのは、スピンコントロールに秀でているから。
長い距離はある程度ランを計算せざるを得ない。したがって、グリーンにキャリーさせて乗せるには、短い距離のショットに比べて縦のブレの許容範囲が狭まる。短い距離であればグリーン奥めにキャリーしても止まるが、長い距離で奥にキャリーすると止まらずにグリーンをこぼれやすくなる。
そして、ボールをグリーンの手前から駆け上がらせる必要があるショットでは、ヘッドが上から入りすぎてしまうとスピン量が増えて、イメージ通りのランが出ず、グリーンに届きにくくなる。
短い距離であれば、ミスヒットしてスピンコントロールがうまくいかず縦距離にブレが出ても、とりあえずグリーンには乗る。しかし、長い距離からは、そうはいかないのだ。
そんな中阿久津は、ドライビングディスタンスをふまえた上でのショット関連スタッツを見ると、残り距離問わずスピン量を安定させてパット勝負に持ち込むことができていることがうかがえる。
■パット次第か
優勝したミズノオープンではパーオンホールの平均パット数が14位だった。しかし、シーズンで見ると71位。1ラウンドあたりの平均パット数でも96位と、パットが不安定。
全英オープンではグリーンの対応がポイントになりそうだ。
ミズノオープン優勝者の全英オープン予選通過は、2017年大会のチャン・キム(11位タイ)以来ない。多くの選手がリンクスに打ちのめされてきた。
阿久津にはミズノオープン優勝者8年ぶりの全英オープン予選通過、だけでなく、上位争いに期待したい。
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著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。