
自身2度目のオールスター選出となったエンゼルスの菊池雄星投手。登板はなかったものの、21年以来の球宴参加は大きな話題となった。
オフにエンゼルスと3年6300万ドル(約98億円)というエース級の契約を結んだ菊池は、ここまで20試合に登板し防御率3.11、4勝6敗、115奪三振、WHIP1.37という成績を残している。移籍後初勝利が5月23日(日本時間24日)と、なかなか勝ち星に恵まれていない印象もあるが、実際の投球内容は一体どうなのか。MLB公式データサイト「Baseball Savant」のデータをもとに分析してみよう。
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■変化球はデータ面でも高評価
昨季と大きく変わったのはアームアングル。2020年は59度だった腕の角度は年々下がっていき2024年には42度まで下がっていたが、今季は35度とさらに下がっている。
そんな投球フォームの変化とともに、今季は投球の割合も変化。昨年は4シームの割合47%と速球主体のピッチングで、スライダー24%、カーブ17.9%、チェンジアップ11.1%と続いていたが、今季はここまでスライダーが投球の軸となっており最多の37%、4シームが34.8%、カーブ13.9%、チェンジアップ12.9%、シンカー1.1%、スイーパー0.3%となっている。
そんな中で各球種の質もみていくと、変化球が効果的になっていることがわかる。球種別の被打率は、スライダー.230、カーブ.169、チェンジアップ.233。スライダー、カーブに関してはRunValue上でも好数値となっており、投球を支える軸となっている。一方で課題は投球割合の減った4シームにありそうだ。こちらは被打率.320と高くなっており、Hard-Hit%も52.7%と強い打球を許している。同様にシンカーもHard-Hit% 66.7%となっていることをみても、速球系のボールの質には改善する要素が多そうだ。
スライダーやスイーパーを活用するため、腕の角度を下げることは重要ではあるが、菊池自身はオールスター前の会見でその代償にも言及。6月以降の投球に関しては手応えを強めているようで、後半戦はさらなるアジャストを通じて、速球やカーブが好成績を呼び込む“伸びしろ要素”となる予感も漂わせる。
113回を投げて奪三振115、K% 23.9%という数値はメジャーでも上位となっており、奪三振数はリーグ8位、奪三振率でも9位と支配力がある印象もある菊池。防御率も3.11と苦戦を続けるエンゼルスにおいては優秀な成績といえるが、実は守備に大きく助けられている側面もある。
それを表すのがFIP(Fielding Independent Pitching)という数値だ。これは、奪三振・四球・被本塁打といった「守備に依存しない投球成績」を表すものであり、純粋な投球内容の良し悪しを図る数値となっている。菊池は実際の防御率3.11に対してFIP3.98となっていることを考えれば、前半戦は守備や打者運に助けられた側面もあると推測できる。
現在、47勝49敗でア・リーグ西地区4位となっているエンゼルス。ワイルドカード争いでも6位となっているが、上位との開きは少なくポストシーズン進出もまだまだ現実的な範囲となっている。苦しいチーム事情の中で、契約に見合ったエースとしての活躍をみせられるか? 菊池の後半戦の奮闘にも期待が高まる。
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