
7月31日から開催されたリシャール・ミルチャリティトーナメントでは、池村寛世が最終日のバック9で1イーグル4バーディの爆発力を見せ、今季初勝利、通算3勝目をあげた。
池村といえば直ドラ(ジカドラ)。
クラブセッティングは、今はフェアウェイウッドを入れているようだが、以前は“ドライバーはスプーン兼務”で、ウッドはドライバー1本だった。以前からロングホールの2打目でもドライバーを手にすることが多い。
また、飛距離より方向を重視するべきホールのティーショットでも、ノーティーアップでドライバーショットをすることがある。
同じツアー選手でも、「あまり直ドラにメリットを感じない。スプーンを使えば良い」という選手がほとんど。
なぜ池村は直ドラを多用し、それを今季現時点(8月3日時点)イーグル率2位、パー5の累計スコア1位といった結果に結びつけることができているのだろうか。
それは、インパクト前にタイミングよくクラブを立たせるスイングをしているから。池村の安定してクラブが立つポイントはアドレスに見られるが、まずはクラブセッティングに着目したい。
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■ドライバーとミニドラ
リシャール・ミルでのクラブセッティングは、ドライバー2本だったようだ。通常のドライバーとミニドライバー。市販モデルと同じヘッドであれば、ヘッド体積は通常のドライバーが460cc、ミニドラが305cc。
ヘッド体積が小さいということは、スプーン寄りということ。現時点ではミニドラが、2打目以降やノーティーアップ時に主に使っているドライバーだと思われる。
これほどまでに、スプーンではなくドライバーにこだわるのは、左に曲がりにくいから。
直ドラはスウィートスポットよりも下目でインパクトすることになるため、球がつかまり過ぎない。さらに、ボールをヒットするためにはインパクト前にクラブを立てる必要があるため、フック回転を抑えやすい。
ちなみにスプーンでのショットは、クラブがインパクト前に多少寝てもボールをヒットでき、飛距離の計算が立ちやすい。しかし、クラブが寝ると左に曲がるリスクが大きくなる。
■右手が上
直ドラは他のショット以上に、インパクト前にクラブが寝ると大きなミスになる。クラブが寝る状態というのは右打ちの場合、左腕や左手が右腕や右手よりも上になる状態のこと。
池村のアドレスを見ると、右腕が左腕よりも上にある。これはクラブを立たせやすいポイントと言える。
そして、右手のグリップはウィーク寄りのスクエア。右手のウィークグリップはストロンググリップに比べて右腕や右手が上になりやすい。だからこれも、クラブを立たせやすくしていると言える。
これらのポイントにより、直ドラが高い精度を発揮しているようだ。
ちなみに、スライスしやすいゴルファーは切り返しからインパクトまでクラブが立ち続けている傾向にある。そのようなゴルファーは池村のような右腕が左腕の上になるアドレスは避けた方が良いだろう。
切り返しでクラブの慣性を生かせれば、アドレスで右腕が左腕の上でも、その利点を生かして、インパクトでヘッド軌道とフェースの向きを合わせることができる。
だがそうでない場合、右腕が左腕の上になるアドレスをすると、ヘッドのカット軌道やスライスの度合いが強まりやすくなってしまう。
■直ドラはトライする意味ありか
練習でなら、直ドラは一般ゴルファーもトライしてみる意味はあるだろう。
難易度は高いが、ノーティーアップでドライバーショットを成功させられるようになると、ティーアップした時のドライバーショットではリラックスしてスイングしやすくなる期待が持てる。
また、直ドラを練習し、コースラウンドのティーショットで低めのティーアップでも打てるようになれば、それは、池村の直ドラように“左へ曲がるリスクを抑える技術”獲得となる。
上から打ち込む意識が過度に強くならないように注意しながら、練習場で直ドラにトライしてみてはどうだろうか。
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著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。