
マリナーズのカル・ローリー捕手は16日(日本時間17日)、敵地カウフマンスタジアムでのロイヤルズ戦で今季10度目の1試合2本塁打を記録。55号、56号とアーチを連発し、スイッチヒッターの史上最多本塁打記録を更新。ケン・グリフィーJr.が持つマリナーズの球団記録にも並んだ。
昨季は自身初のゴールドグラブ賞を獲得。受賞者から唯一選出されるプラチナグラブ賞にも輝くなど、捕手としての信頼も厚い。生え抜きでマリナーズの顔となった28歳は、どのような選手なのか。ここでは、MLB公式のデータサイト『Baseball Savant』より、年々着実に成長を遂げてきたローリーの打撃指標について掘り下げる。
◆ローリーとシュワーバー、史上初の珍記録目前「.260未満、50本塁打」 チーム“1試合平均本塁打数”は149年間で史上6位に
■昨季までは右打席が課題に
球団記録「56本塁打」は右打席で達成メジャー5年目のローリーは、2018年ドラフト3巡目全体90位でマリナーズに入団。21年にメジャー初昇格を果たすと、翌22年から持ち前の長打力を発揮。27本塁打を放ち、99試合で先発マスクを被った。若くして正捕手の座に定着すると、23年には30本塁打、昨季は34本塁打とアーチを量産。打率は年間.210から.230ほどで、本塁打か三振かという「ロマン砲」としての特徴が色濃かった。
とりわけ課題だったのが、機会が少なく力強さに劣った右打席。左打席に比べてバット速度が遅く、23年の時点では75マイル以上(約120.7キロ)以上の割合を示す「Fast-swing Rate(高速スイング率)」が15.6%低く、打球速度も平均で2マイル(約3.2キロ)以上下回っていた。
■スイング改善でフォーシームも克服
ローリーが今季大躍進を遂げた要因がこの右打席の課題克服で、いずれの指標も左打席の水準に肉薄している。直近3年間で「4本→13本→21本」とアーチが急増。打率だけで言えば、今季は左打席.232に対して、右打席は.280を記録。昨季の.183より大幅に上昇した。
今季の平均打球速度91.4マイル(約147.0キロ)は両打席とも同じで、メジャー全体では46位にあたる。大谷翔平投手(ドジャース)やアーロン・ジャッジ外野手(ヤンキース)ほどのエリートクラスではないが、バレル率19.4%は全体4位。右打席に限ると25.6%まで跳ね上がり、トップのジャッジを上回る。長打になりやすい角度へ打ち出す技術に長けているのだ。
また、今季は苦手にしていたフォーシームも克服。得点期待値を示す「RunValue(ランバリュー)」でア・リーグ6位の+13をマークしており、昨季の+3より増加。力強いスイングが増えた右打席の球種別打率では、昨季の.115から.290まで劇的な改善が見られた。
■大舞台に強い、無類の勝負強さも魅力
両打席とも典型的なプルヒッターで、引っ張り率54.1%はアイザック・パレデス内野手(アストロズ)、カイル・シュワーバー外野手(フィリーズ)に次ぐ全体3位。フライボール率42.7%は全体1位で、引っ張り時の同指標もトップ。強打者らしい特徴がいくつも浮き彫りになってくる。
今季開幕前には、6年総額1億500万ドル(約157億5000万円)でマリナーズと契約延長。2022年には、21年ぶりのポストシーズン進出を決めるサヨナラアーチを放つなど、土壇場での勝負強さも魅力のひとつ。
多くの野球ファンの目には、彗星の如く現れたスラッガーに映るかもしれないが、過酷なポジションで地道な成長を続けてきた努力の選手なのだ。(※打撃指標はいずれも9月18日時点のもの)
◆ローリーとシュワーバー、史上初の珍記録目前「.260未満、50本塁打」 チーム“1試合平均本塁打数”は149年間で史上6位に