
さすがは国内最高峰カテゴリー、勝負はすんなりとは決まらない。SUPER GT2025年シーズンは今週末、モビリティリゾートもてぎで最終戦を迎える(第8戦:11月1日予選、11月2日決勝)。GT500クラスのタイトル争いは第7戦で予想外の流れとなり、6チームがタイトルの権利を持って挑むこととなった。
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■優勝候補にまさかのアクシデント
開幕戦に勝利し、以降も着実にポイントを重ねランキングトップを守り続けてきた2連覇中の王者#1 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)が、オートポリスで行われた第7戦でまさかのノーポイントを喫した。
第7戦前の時点では#14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺)だけが1号車に8ポイント差と僅差につけており、サクセスウェイト半減の第7戦でタイトル決定もありそうだと、普段は九州まで来ないメディアも駆けつけていた。決まらなかったとしても、圧倒的有利で最終戦を迎える状況になると、多くが予想していたはずだ。
予想外というのは、速さがなかったとかバトルで接触したとかではなく、マシントラブルでリタイアしたことだ。予選は雨がらみの難しいコンディションになり、1号車はライバルとは違った戦略を採るも失敗。それでも7位につけたあたりはさすがだった。
3時間のタイムレースで行われた決勝も、前半は上位が目まぐるしく順位を変える中でしぶとく4位まで浮上する強さを見せていた。ところが後半になりエンジンのパワーが落ちる症状が出始め、緊急ピットイン。これでポイント圏内から脱落することになった。2連覇した昨年、一昨年の15戦で、こうしたケースはなかった。それが強さでもあったのだ。
■3連覇に暗雲も、決勝戦の行方に期待感
気がかりなのは、その第7戦で同じチームの#37 Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)も全く同様の症状でリタイアしたことだ。
チームは偶然だと説明しており、それがありえる状況だったことも理解している。だがここまで順風満帆だった流れは、確実に変わった。ノーポイントだったとはいえ、ランキングトップはキープしている。それでも3連覇の可能性は高いとの予想は揺らいでしまう。勝負の世界ではこうした“流れ”というものが、結構重要だからだ。
最終戦を前にタイトル争いの状況を整理すると、ランキングトップは1号車で60.5ポイント。2位は14号車で6ポイント差、3位は第7戦で優勝した#100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐)で8.5ポイント差、4位は#38 KeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹)で9.5ポイント差、5位は#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ)で16.5ポイント差、6位は37号車で17ポイント差。
ポイントの状況を見れば、1号車だけが自力タイトルの可能性を持っているということになる。さらに最終戦はノーハンデで争われるが、1号車は2023年から富士でのスプリントレースを含めた7度のノーハンデ戦で5度優勝と、圧倒的な結果を残している。
もてぎ戦も2連勝中だ。誰の目にも、1号車の優位性は極めて高い。だがわずか2週間前ということもあり第7戦の記憶が鮮明に残っている筆者は、どうもそうすんなりとはいかない気がしている。前半戦すべてをトヨタ勢が制したのに対し、後半戦ではニッサン勢とホンダ勢が巻き返していることも気になる。その中でチャンピオンを決めてこそ3連覇にふさわしい絶対王者とも言えるのだが、果たしてどういう結末になるのか……決勝までまだ3日あるというのに、いつになくドキドキしている。
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