
今週は秋の名物ハンデ重賞、第63回アルゼンチン共和国杯(GII、芝2500m)が東京競馬場で行われる。
今年は、重賞2勝の実績馬ローシャムパークをはじめ、目黒記念2着ホーエリート、毎日王冠4着のディマイザキッド、オクトーバーSを制したニシノレヴナント、丹頂Sを制したミステリーウェイなどの上がり馬など、個性的なメンバーが揃い、激戦が展開されそうだ。
そんな中、札幌日経賞を制したスティンガーグラスが、今回の「危険な人気馬」の標的となる。
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■臨戦過程と実績に不安視
ダノンファンタジーの半弟で、血統面でも注目されてきたスティンガーグラスが長距離戦線で一歩ずつ階段を駆け上がり、4歳を迎えて本格化ムード。前走の札幌日経賞では外から鮮やかな差し切り勝ちを決めて、オープン初勝利を挙げ、絶好調ルメールを鞍上に初重賞への期待は膨らむ。
しかし、これまでに重賞へ3度挑戦するも、結果は芳しくなく、その壁は大きいように思える。3歳時のスプリングSやセントライト記念は本格化前と考えても、今春の目黒記念は2番人気に支持されて11着大敗。ルメールのレース後のコメントも「全然伸びませんでした。(敗因が)分かりません…」と述べており、今回同舞台で行われるだけに、気にかかる材料ではある。
また過去10年のAR共和国杯で、前走がオープン特別組は【1.2.0.33】複勝率8.3%と、決して信頼できる数字ではない。勝ったのは昨年のハヤヤッコのみで、同馬はそれまでに重賞2勝の実績馬。ハンデ戦で荒れそうな印象のあるレースだが、基本的にはGIやGIIから転戦してきた実力馬が上位を賑わせる一戦で、実績面で乏しいスティンガーグラスにとって楽なレースではないだろう。
■キズナ産駒が不得手な舞台か
スティンガーグラスの父はリーディングサイヤーのトップを走るキズナ。しかし同産駒の東京芝2500m成績は、サンプル数こそ少ないものの、これまでに【0.0.0.6】と一度も馬券に絡んだことがない。ちなみに、産駒は重賞46勝(うちGI5勝)を挙げているものの、東京芝2400mはいまだに重賞未勝利。意外にも府中の長距離は不得手な分野かもしれない。
そして、ルメール騎手×木村厩舎といえば、数々の大レースを席巻しているコンビであるが、今年の重賞成績は【0.1.0.4】で、ここまでは未勝利。2020年から毎年重賞を制覇しているが、今年は重賞での乗鞍も少なく、記録が途絶える可能性もあるだろう。
秋華賞、菊花賞、天皇賞、JBCクラシックとGI4連勝で、飛ぶ鳥を落とす勢いのルメール騎手だけに、スティンガーグラスも人気沸騰は必定であるが、実績不足や臨戦過程、血統面、厩舎との相性など、今レースに限っては不安要素は多く、そろそろ連勝街道は止まるのでは、という意味も含めて、人気ほどの妙味はないと考え、少なくとも「頭」勝負は避けたい。
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◆著者プロフィール
石川豊●いしかわゆたか20代から競馬メディアに寄稿。「ユタカ人気」と言われた時代、武豊が騎乗する過剰人気馬をバッサリと切り捨てる馬券術を駆使し、年間回収率100%超に成功。以来、「1番人気の勝率は3割」を念頭に、残り7割の可能性を模索し、「危険な人気馬」理論を唱え続ける。


