【世の中】宮崎発のベンチャー「会わない営業」で広がるECビジネス | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【世の中】宮崎発のベンチャー「会わない営業」で広がるECビジネス

ライフ 社会
代表取締役社長の濱渦伸次氏
代表取締役社長の濱渦伸次氏 全 6 枚 拡大写真
■地方発、1000人規模のEC企業を目指す

 地方でビジネスを興し、新しい雇用を創出しようとする動きが注目されている。宮崎に拠点を構える株式会社アラタナは、「宮崎に1000人の雇用をつくる」という目標を掲げる地方発のITベンチャー企業。ネットショップ構築パッケージ「CAGOLAB(カゴラボ)」、ショップ向けのデザイン製作アプリケーション「SketchPage(スケッチページ)」などeコマースに特化したテクノロジーとサービスを提供し、1000社を超えるネットショップの支援実績を持つ。

 代表取締役社長の濱渦伸次氏は、地元宮崎の出身。一度は東京に出てメーカーに就職したが程なくして宮崎に戻り、飲食店経営に挑戦するも失敗。その後しばらくフリーランスとしてWeb製作・カメラマン等の仕事を兼務し、2007年、工業高専時代の同級生でもあった穂滿一成氏(現アラタナ取締役)と2人でアラタナを創業した。フリーランス時代に地元のアパレルショップにおいてネットショップ構築を経験。地方の商店街など、小規模店舗が衰退していく中、ネットショップに活路を見出して成功するということを実際に経験し、ECの可能性に気付いたのだという。

 「宮崎に1000人の雇用をつくる」という目標は、創業当初から既に掲げていた。1企業で1000人規模の採用を目指す以上、地元だけで仕事を獲得していたのでは限界がある。目を付けたのは、“オープンソース”のEC構築パッケージだった。「全国から顧客を獲得することが必要な中で、スケールが見込めて、かつ安定するビジネスモデルはASPだろうと考えました。ただし当時は資金もなく、社員も2人だけ。その状態で始められるASPサービスを思案していたところ、『EC-CUBE』というオープンソースが出てきた。これを活用すればやれるのではないかと思いました」(濱渦氏)。EC-CUBEをベースに、サーバーや決済システム、追加のカスタマイズなどのサービスを加えて独自にパッケージ化することで完成したのが「カゴラボ」だ。当初はノウハウと成功体験を有していたアパレル関連にターゲットを絞って業界特化のECパッケージとしてスタート。その後、細かくカスタマイズできる拡張性、デザイン・システム構成から運用・SEO対策までワンストップでの提供できることなどの特徴が支持され、他業界や県外の顧客を獲得。現在までに約800サイト以上の導入実績があり、EC-CUBEでの構築実績は国内1位となっている。

■敢えて「人手を介す」ことで差別化を図る!営業は“会わないこと”を徹底

 「ECの技術に特化した100人が宮崎にいることで、売れるネットショップを速く安く作れる」。濱渦氏はアラタナの一番の強みをこう話す。たとえば「カゴラボ」では、ショップの成長に合わせた自由度の高いカスタマイズが可能で、一般的なASPサービス、モール型サービスとの大きな違いになっている。通常、サービスのコストを下げるためには、いかに「自動化」するかがポイントになるが、こうした個別のカスタマイズは自動化できない。アラタナは、この自動化できない部分にチャンスを見出し、積極的に「人手を介す」ことで顧客の満足度を上げてきた。顧客の要望をひとつひとつ丁寧に聞き、オーダーメイドに近い対応を行ってきた。オフィスの賃料や社員の生活費が首都圏に比べて格段に安いため、人手を介しても価格競争力が失われない。

 さらに同社がユニークなのは、「一度も会わない営業」を徹底している点。いわゆる訪問営業を行わなくても、電話やメール、Skype等のITツールを活用することで顧客とのコミュニケーションは十分はかれるという。逆に長時間移動して営業に出ない分、サービスの質や対応速度の向上、提供価格を抑えることができているそうだ。

■地方だからこそ人材が集まる

 人材の獲得についてはどうだろうか。人口が圧倒的に少ない分、人材獲得のハードルは高いように思える。「人がいないのでは?ということはよく聞かれます。実際、地方にたくさんのエンジニアがいるかと言われれば、そんなことはありません。ただ、局地的に、宮崎のIT業界の中でみれば、僕たちは少し目立つことが出来ている。そのおかげで、宮崎出身で帰ってきたいとか、都会出身だけど田舎で働いてみたいといった、Uターン、Iターンの優秀な人たちを集めることが出来ています」。

 地方出身者が都会に出ていく理由として、地元に魅力的な企業が無いことは大きな要因のひとつだろう。働きたいと思える企業があれば田舎に帰る、という人も多いのではないか。「周りの友達がみんな東京や他の都市圏に出て行ってしまって、それはやっぱり寂しいですし、宮崎で育った人が宮崎に残らないのであれば、いずれ衰退する未来しかない。だから、出ていく人が留まりたいとか、戻ってきたいと思えるような会社を作りたいと考えて、宮崎に1000人の雇用を作ると言い始めました」。

 ECの技術を活用して、新しい分野の開拓も考えている。そのひとつがメディアコマース分野。昨年10月にはファッション系Webマガジン「ハニカム」を買収し、メディアを活用したECビジネスを開始した。メディアやソーシャルネットワーク上でコンテンツとECを連動させ、コンテンツに登場する服や小物が直接購入できる仕組み等を展開する。メディアコマースに力を入れる理由は、ネットショップにおける集客の効率化を追求するため。「集客に費用がかかり、売上は上がっても利益が出ないショップを数多く見てきました。今後のECでは、集客の部分をどれだけ効率化できるか、広告費の比率を下げて売上げを上げられるかどうかが重要になってきます」とのこと。今後もメディアは随時増やしていく考えだ。メディアの買収は東京での活動が主になるが、あくまでビジネスの主体は宮崎で行う。「宮崎で産まれた技術の価値を、東京で何倍にもしていきたい。個人的には、社内のことは社員たちに任せて、そういった動きをしていくつもり」とのこと。

 2名で始めた会社だが、現在社員は100名を超え、1000人規模の雇用創出も現実味を帯びてきた。今後も軸はECに置き、EC市場の中で成長を目指していくという。「EC市場はまだまだ伸びています。5年後を考えた時、市場規模からすれば1000人規模の企業がいくつかあってもいい。また、そうであるならば、その内のひとつは僕たちだろうと思っています」。

【連載・視点】宮崎発のベンチャー企業!会わない営業で広がるECビジネス

《白石 雄太@RBBTODAY》

≪関連記事≫
≫貴重な水着ショットも披露!「もはや高校生には見えない」大人っぽい池江璃花子、沖縄・石垣島の海を満喫

≫ケンブリッジ飛鳥と滝沢カレンが似てる?リオ五輪時から密かに話題だった

≫レアル所属・中井卓大ってどんな選手?…「リアルキャプテン翼」と呼ばれた少年時代

関連ニュース