【山口和幸の茶輪記】フランスでも自転車は歩道を走るけど、問題とならないのはなぜか? | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【山口和幸の茶輪記】フランスでも自転車は歩道を走るけど、問題とならないのはなぜか?

スポーツ まとめ
ピレネー山麓の町サントマリー・ド・カンパン
ピレネー山麓の町サントマリー・ド・カンパン 全 7 枚 拡大写真
東日本大震災を契機に移動手段としての自転車が一躍脚光を浴びた。自転車利用者の急激な増加にともなって歩行者との接触事故なども多発することになり、「自転車は車道で左側通行」が各方面で唱えられている。

「ヨーロッパでは自転車通行帯が整備され、歩行者と自転車は分離されているのがあたりまえ」などと自転車先進国を見習えと言われる。そういえば、パリの歩道上にも自転車の交互通行帯が白線で区切られ、それでうかつにも友だちとの話に夢中になっていたりすると、「ここは自転車レーンだから立ち止まらないで」と注意された経験があった。

日本からしてみたら自転車の本場であるヨーロッパはいい見本だ。ところがボク自身は恥ずかしいことに四半世紀のツール・ド・フランス取材において、「自転車と歩行者の住み分け」という観点でものごとを見ていないことに気づいた。そこで遅ればせながらこの夏はその部分も注意深く観察しながらフランス一周の旅をしてみたのだ。

フランスの道路はA(オートルート=いわゆる高速道路)、N(国道)、D(県道)に区分され、ごていねいなことに色づけもされる。Aは青、Nは赤、Dは黄色だ。このうち自転車が基本的に走れるのはNとD。ただしNは時速110kmで自動車が突っ走る部分も多いので、たいていは緑地帯か森林をはさんでサイクリングロードが平行に走っている。

かつてツール・ド・フランスが自転車王国オランダで開幕したとき、宿泊ホテルからジョギングしようと思って外に出たものの、自動車道とサイクリングコースしかなくて困ったことがある。でもこういった場合、サイクリングコースで前後を気遣いながら歩いたりジョグしたりしても構わないことをあとで知った。要は他の人の存在を気遣いながら利用すればいいのだ。

ツール・ド・フランスのコースとなることが最も多いDは、郊外に出れば最高速度90kmでクルマが走る。この道では交通量も多くないところで、たまに渋滞するシーンに遭遇する。その渋滞原因は道路脇を馬車かサイクリストが走っているケースだ。ドライバーのマナーとしてサイクリストを追い越すときは少なくとも1.5mの間隔を空け、さらに十分にスピードを落として追い越す。フランス人ならあたりまえのマナーだ。

「少なくとも1.5mの間隔」というのは反対車線まで飛び出す必要があり、対向車がある場合はそれができないのでサイクリストを追い越さない。サイクリストと同じスピードで安全に追い抜けるところまで後続を走る。だからちょっとした渋滞も発生するわけだ。

サイクリスト側の走り方はどうだろう。郊外はそうやって道路脇を走行するのだが、町では意外とみんな歩道を平気で走っている。道路構造上、歩道しか走れない部分もある。でも日本のように歩行者と接触することはまずないようだ。自転車が突っ走るところは郊外であって、街中はいつでも止まれるスピードで走る。歩行者がいたら優先する。とりあえず同じ道を共有する者としてまずは声をかける。

こういったシーンを見かけるにつけ、ドライバー、サイクリスト、歩行者がお互いをリスペクトしているんだなと感じる。ユーロ通貨は統合されたが、フランス政府が発行する通貨には「自由・平等・博愛」の文字が刻まれている。法律というよりも人間としての気持ちこそが道路交通問題の解決策につながっていくのではと感じた。

《山口和幸》

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