都立三鷹高校サッカー部、最後の選手権…連載第2回【健全な反骨心】 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

都立三鷹高校サッカー部、最後の選手権…連載第2回【健全な反骨心】

オピニオン コラム
田嶋優也選手
田嶋優也選手 全 17 枚 拡大写真
2014年12月30日、各都道府県で行われる予選を勝ち抜いてきた代表チームによる、第93回全国高校サッカー選手権大会が開催される。

その開幕戦を飾るのは、今夏の全国高校総体で優勝し、2年連続16回目の出場となる優勝候補の一角、東福岡高等学校(福岡)と、7年ぶり2回目出場の東京都立三鷹高等学校(東京B)。

一回戦で優勝候補筆頭の東福岡と当たることになった三鷹高校。選手たちはどう感じ、どう戦っていくのか。また、進学校として受験を控えるなかでのメンタルコントロール、日々の生活に対する意識はいかなるものか。

試合のカギを握る選手たちへインタビューを実施した。初回は、田嶋優也(たじまゆうや)選手。

数多くのOB選手に取材するなかで、最も名前が挙がったのがこの選手。佐々木監督からのコメントにも、田嶋選手の個性が垣間見える。


【OBコメント】

「小さい体ながらでもガッツあふれるプレーでチームに貢献している。」
「とにかく体を張る選手。」
「一年生の頃は本当に下手だったのに、今ではチームに欠かせない存在となった」


【監督コメント】

「目立たないのだけれど、しっかりとディフェンスをする選手。運動量が多く、他の選手を楽にさせます。いままでの大会で結構な数の写真を撮ってもらっていますが、彼の写真が一番多い。一番多いということは、一番ボールに絡んでいる、ボールの近くにいる。そういう選手です。」

***

---:OBコメントでもあるように、はじめはレギュラーではなかったみたいですね。まずはレギュラーを勝ち取るに至った要因を教えてください。

田嶋選手(以下敬称略):先輩たちの言うとおり、自分は本当に下手くそだったので、その分練習にはしっかり取り組もうと意識してきました。技術がないので、とにかくチームメイトに迷惑をかけたくないっていう思いがずっとあったんです。

なので、「がむしゃらにやるしかない」と必死に練習や試合でプレーを続けたところが、自然とプレースタイルにつながったんだと思います。ずっとがむしゃらにやってきて、周りもそれを「腐らずに頑張っている」という風に評価してくれるようになってきたから、レギュラーになることができたのかな…。



途中まではレギュラーではなかったのですが、それまで出場していたボランチの選手が怪我をしてしまい、自分が代わりに出ることになってから、レギュラーに定着することができたように思います。いつでも出れるように、がむしゃらにやって準備してきたことが一因かな、とは思います。

---:三鷹高校は私立の強豪に比べて練習時間が短かったり、練習環境が一般的だったりという、という状況があったと思いますが、それらをどうカバーしましたか。

田嶋:自分たちでよく話し合って、チームワークを磨いてきたことだと思います。スポーツ推薦とかで選手が入ってくるような環境でもないので、入学時からスポーツ推薦で選手をとったり、芝で練習しているような私立の強豪に、一泡吹かせてやりたいな、ということはずっと思っていました。

---:予選を勝ち抜くにあたり、周囲のサポートも重要な要素になりますね。

田嶋:試合に出ることができていない選手たちの存在が、すごく自分の支えになりました。練習も、出場している11人だけじゃできないので他の選手の協力が必要です。また、自分たちは部員数が少なく、これまで戦ってきた相手チームの方が部員数が多いことは普通でした。

ただ、それでも三鷹のベンチからはすごく応援の声が聞こえてきて、本当にそういうところでは支えになりました。

時にはレギュラー中心の練習になることもあるけれど、そういう時もその練習の準備をあたりまえのことだと思ってしてくれる。本当に感謝しています。

---:三鷹高校サッカー部が他校に誇れるところは。

田嶋:チームとしてのまとまりがあるかな、とは思います。部員が少ないことが逆に結束力につながっているのかな。学校としても本当に応援してくれているし、そういうところが三鷹全体として誇れるというか、いいところなのかな、と思います。

プレーでは、粘り強さがあるかと思います。あとは、球際の強さ。

---:いま言葉に出た「粘り強さ」や「球際の強さ」が生まれてきたのはなぜですか。

田嶋:自分たちは技術がないので…。もっと技術があったら、パスを細かく繋いだりするサッカーがしたいのですが、なかなかそういうわけにもいかないので、球際のところで絶対に負けなかったり、相手より走ったり、ということがどうしても必要なんです。この部分は普段の練習、合宿とかでも意識してやってきたところでもありますね。

メンタルのところでは、本当にこの選手権に懸ける想いが自分たちは強かったです。



---:全国をつかみ取るほどに、選手権に懸ける思いが強く保てたのにはなにか理由がありますか。

田嶋:よく言われるのが「三鷹高校として最後の選手権」ということです。ただ、確かにそういった思いもあるとは思うんですけれど、自分はそれよりも、ひと学年上の先輩に、「お前らの代は公式戦3試合で終わるぞ」って言われてたことが印象に残っています。

「公式戦3試合」というのは、新人戦とインターハイと選手権のことで、それぞれ初戦で負けるぞ、って意味なんです。(笑)

…で、実際に新人戦もインターハイもすぐに負けてしまって、選手権にはその宣告にリーチがかかり、本当にその通りになってしまいそうだった、という状態で…。

それで、「選手権こそは、選手権だけは勝ち抜くぞ」っていう思いが特に強くなりました。

---:東福岡高校にもいると思いますが、上手い選手にはどう対応していきますか

田嶋:「一人でダメだったら、二人で止めればいい」といった風に、やられっぱなしになるのではなく、常にどう対応するか考える姿勢が必要なんだと思います。上手い選手にはいままでも出会ってきたので、そういう風に戦ってきました。

---:日々の生活で意識していることはありますか。

田嶋:よく食べることですね(笑)。普段の生活からサッカーのことを考えているので、試合前は早く寝ること、疲れていたら長めにお風呂に入ること、などもあたりまえのことですけれども意識しています。

サッカーが普段の意識の90%を占めるので、学校もサッカーしに来ているようなものです(笑)。

---:勉強の調子はどうですか。

田嶋:正直やばいです(笑)。ただ、周りに比べればたいしたことはないと思うんです。一応できる限りのことはやろうとはしています。部活を終えて、塾に行って…。でも、どうしても眠くなってしまうので…(笑)。

勉強はできる限りの範囲でいいかな、とは思っています。OBにも、「勉強は浪人してもできるけど、サッカーは今年で終わりだぞ」って言われて、ほんとその通りだなと思っているので。

---:サッカーに話を戻します。優勝候補の東福岡と対戦することになって、改めてどう感じていますか。

田嶋:そうですね、相手が相手なので。みんなは喜んでいたんですけれども、自分としては「まじか…。」という感じで(笑)。いや、本当に弱気になってしまって。「一回くらい勝ちたかったな…。」とか思ってしまうレベルで(笑)。

巽(三鷹高校キャプテン)が、抽選会行く前に「よっしゃ、東福岡引いてくるわ」って宣言して、本当に引いて帰ってきたので、「うわ、おまえほんと持ってるな!」ってなりましたね。

どうせあたるなら全国レベルのところとやろうぜ、とみんな言っていたので、喜んでいたやつも多くいました。

ただ、楽しみな気持ちももちろんあります。将来日本代表とか、そういうポテンシャルを持つ選手もいますし、試合ができることが本当に楽しみです。



せっかく全国に出て、試合ができるのだから、プロが決まっている選手もいるチームに挑みたい、どこまでできるか知りたいです。(対戦相手の東福岡は、ヴィッセル神戸に増山朝陽選手、横浜F・マリノスに中島賢星選手の内定が決まっている)そういう思いとの狭間で、なかなか複雑という感じです。

---:ここまでチームを指揮している佐々木監督と戦う集大成の大会ですが、選手として監督に対して思うことはありますか。

田嶋:自分たちに任せてくれたので、何か言われても、自分たちがこうだと思ったらそれを通してやっていけたし、先生の言っていることがいいな、と自分たちが判断したらそっちの方を受け入れてやっていくことができました。そういう環境でやれてきたのは大きかったと思います。

何の練習をするにしろ、自分たちで「なぜこの練習をするのだろう、本当にこの練習でいいのだろうか」みたいなことを意識して、考えてやっていくようになったのも、勝ってこれた要因なのかなと思います。

---:では、チームメイトに対して思うことは。

田嶋:色々と問題も多かった自分を見捨てないで支えてくれて、本当に感謝しかないです。

***

ソフトな雰囲気ながら、発する言葉の端々に感じ取れる反骨精神が、田嶋選手の成長を促した。ピッチに立つ選手、支える選手、マネージャー、そして監督も含め「俺たちのチーム」を作り上げて来たという意識、自然に育まれた信頼感でチームがつながっている。

***

次回は、佐々木監督が「チームの勝利は彼の成長なしには語れない」と評する、武田啓介選手のインタビュー。2年生までフォワードでプレーしていたが、キーパーがいない代だったということもあり、全く経験のない中で6月にGKに転向して練習を積んできた武田選手。その心情に迫る。

《大日方航》

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