片側3車線のこの国道。中央分離帯にはその上を走る首都高速3号線の橋脚があり、各車線の幅は道路構造令どおりとはいえ、自転車も通行する左端の車線(第1通行帯)の実状は2.75m(※)と狭いものになっています。さらに地下を東急田園都市線が通っている関係で同線の駅が沿道にあるため、乗降客を中心に歩行者の数も多く、2005年に実施された道路交通センサスでの最寄りの地点(世田谷区上馬1-15)の値(昼間12時間)は、自動車が2万6304台、自転車が2239台、歩行者が2966人に達しています。つまりドライバーにとっても歩行者にとっても、もちろん自転車に乗る人にとっても通行に支障のある国道といっていいでしょう。そこにあえてナビラインを設置したところに、この道路を管轄する東京国道事務所の本気がうかがえます。
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国道246号線を実際に走行し、自転車に乗る側からの意見や要望を伝えた
当日は土曜の午後ということでバス専用通行帯の規制はされておらず、駐車のみ禁止(停車はOK)という条件ではあったものの、明らかに駐車と思われるクルマが多く止まっています。当然、ナビラインをそのまま走り続けることはできず、後続車に注意を払いながら追い越すことになります。ナビラインの設置が路上駐車を抑止する効果を発揮すればいいのですが、現状を見る限りそのようにはなっていないようです。
また、ナビラインの設置は車道を通行する自転車の空間を確保するためだけでなく、歩道を通行する自転車を車道に誘導し、歩行者との交錯を減らすところにも眼目があります。そのため随所に「自転車は車道の左側」と書かれた立て看板が設置されているわけですが、惜しむらくはこの看板が車道に向けられていて、肝心の歩道を通行する自転車からは気づきにくくなっています。
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自転車の車道通行を促す立て看板。車道に向けて設置されているため、歩道を通行する自転車からは見づらい
そもそも自転車ナビラインという言葉が浸透していないため、何を指しているのかピンとこないという人もいるでしょう。イラストや図を用いて、わかりやすく説明する必要もあります。ナビラインにしろ立て看板にしろ、それの指示するものがなんであるかがキチンと伝わらなければ、絵に描いた餅になってしまいます。さまざまな制約を課されたなかでの苦肉の策という側面もありましょうが、この点への配慮を肝に銘じていただきたいものです。
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今回の整備は駒沢交差点~上馬交差点間だが、東京国道事務所ではこれを三軒茶屋交差点まで延伸する予定だ
当日は会場から、「第1通行帯の幅が2.75mしかないため、バスは車線幅いっぱいを占有する。そうすると必然的に自転車はバスの真後ろを走ることになり、追い抜こうとする自転車はバスの死角からいきなり姿を現すことになる」というバスドライバーの発言がありました。今回の催しの意義が、端的に表れた瞬間でした。
※現地の道路区分は第4種第1級ということで、本来は3.25mの車線幅員が必要となります。ただし、「車道の効用を保つために支障がない場合においては路肩(0.5m)を設けないことができる」という特例があるため、この0.5mを足して基準をクリアしているものと思われます。