盛んに繰り返された試合前の宣伝でボクシングに興味を持つ人が増え、中継を行ったWOWOWの加入者も大幅に増加したと聞くが、そうした人たちは判定の難しさや不可解さばかりが印象に残ったのではないか。
海外でもメイウェザーのファイトスタイルは「ボクシング版チェルシーだ!」と、イングランド・プレミアムリーグを制したサッカークラブになぞらえられている。
波乱を起こさず、ドラマ性がなく、淡々と勝つ姿が共通しているとのたとえ。共通している感想は「強いが試合はつまらない」ということのようだ。
この試合はフィリピンの貧しい村から、世界のスーパースターになったパッキャオが、47戦無敗のチャンピオンに挑む構図で戦前は取り上げられた。サクセスストーリーの完結は当然、パッキャオの勝利が期待される。
そうした安直な物語を望む外野の声は一切聞かず、観客からブーイング受けても12ラウンド自分の戦い方を貫いた精神力こそ、メイウェザーのメイウェザーたるゆえんでもある。彼はボクシング界における究極のアンチヒーローなのだ。ブーイングが大きければ大きいほど儲かると割り切っている。
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■パッキャオはこれがラストマッチの可能性も
パッキャオは次の試合について「誰とも話をしていない」としている。
「今は肩を100パーセント回復させることと、議員の仕事や家族のことだけを考えている」
一部では、この試合がパッキャオのラストマッチになるのではないか、もうリングに戻ってこないのではないかとも言われている。
現職の国会議員としても活動するパッキャオ。36歳という年齢もあり、試合に向けたコンディションを作るのは容易なことでない。あるとしたら今回のリベンジマッチと見られるが、メイウェザーは試合直後から発言が二転三転し、パッキャオとの再戦も9月の試合で引退も噂される。
歴史に残るビッグマッチも、終われば残るのは現実だ。キャリアの終盤に差し掛かった両者の進退、訴訟の行方など今後はリング外での動きが注目される。