「文句ひとつ言わずに、本当に一生懸命やっていましたよ」
コンバートされた直後は「難しいな」と思ったサイドバックも、時間の経過ともに"天職"と思えるようになったと有吉は照れくさそうに笑う。
「自分次第なんですけど攻撃にも関われるし、途中からはだんだん楽しくなってきました。いまではサイドバックが一番自分に向いているのかなと思っています」
■中高で培った力
中学・高校の6年間は鹿児島県の強豪、神村学園でプレー。「とにかく走らされた」と振り返る日々で培われた無尽蔵のスタミナとスプリント力、FW出身者ならではの攻撃力、すべてを吸収する素直な心が完璧なまでのハーモニーを奏でたのが今大会となった。
スイス女子代表とのグループリーグ初戦で近賀から右サイドバックの先発を奪うと、前半18分には積極果敢な攻め上がりから決定機を演出。そして、右サイドを何度もアップダウンする159cm、52kgの背番号19がひときわ光り輝いたのが、オランダ女子代表との決勝トーナメント1回戦だった。
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有吉佐織
両チームともに無得点で迎えた前半10分。左サイドからキャプテンのMF宮間あや(岡山湯郷Belle)が放ったクロスに、FW大儀見優季(ヴォルフスブルク)が難しい体勢から頭をヒットさせる。シュートがバーを叩いて跳ね返ってきたところへ、右サイドから走り込んできたのが有吉だった。
「日本の最初のシュートだったので、思い切り打っていこうと。そうしたら入ったので、本当によかったです」
言葉通りに迷うことなく振り抜かれた右足から放たれた強烈な一撃は、地をはうような軌道を描きながら左側のネットに突き刺さる。出場38試合目にして初めて決めた代表でのゴール。イングランド女子代表との準決勝でも、果敢な飛び出しから先制点となるPKを誘発。この試合のMVPに選ばれた。
【有吉佐織がなでしこジャパンで光り輝いた理由 続く】