第1戦、第2戦を制し意気揚々とヤクルトの本拠地へ乗り込んだソフトバンク。試合前からリラックスした様子が見られ、昨年の日本一チームの余裕を感じた。
対するヤクルトは負ければ後がなくなる一戦。2試合続けていいところなく敗れており、本拠地に舞台を移したことで流れが変わるのをファンは期待していた。その期待に最高の形で応えたのは山田哲人だった。
■史上初の1試合3打席連発
ソフトバンクの柳田裕樹とともに今シーズン、2002年の松井稼頭央以来となるトリプルスリーを達成した山田。日本シリーズも開幕前は「山田と柳田のトリプルスリー対決」と注目された。
だが山田は第2戦まで打率.143と低迷、ソフトバンク投手陣に完璧に抑え込まれていた。短期決戦では実力あるバッターでも、序盤でつまずいて復調できないまま終わることが珍しくない。ソフトバンク投手陣が眠らせたままにしておくのか、それともホームの大声援を受け目覚めるのか。
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試合前のソフトバンクホークス主力陣
注目の第1打席は初回に回ってきた。上田剛史が四球を選び出塁、川端慎吾は倒れ一死一塁。山田はカウント2-2から変化球を叩き、バックスクリーン左に先制の2ラン本塁打を放り込んだ。ついに目覚めた主砲の一発に神宮球場が揺れる。早くも一塁側スタンドは傘の花が開いた。
同点に追いつかれたあとの三回裏、ヤクルトは二死ランナーなしで再び山田に打席が回ってくる。初回の一発で何かが変わったことを信じるファン。その前で山田は第1打席のリプレイを見ているかのようなホームランを放つ。2打席連発にスタンドのファンは立ち上がり、口々に「さすが山田」「今日はいいものを見せてもらった」と興奮気味に話していた。
しかし、この日の山田劇場はまだ終わらない。ソフトバンクに勝ち越され3-4と1点ビハインドに変わった五回裏、山田は一塁に川端慎吾を置き二死一塁で打席に入る。ピッチャーはCSファイナルステージで最高の救援を見せた千賀滉大に代わっていた。工藤公康監督が全幅の信頼を寄せ送り出した投手だが、山田はインコースのストレートを弾き返し、レフトスタンドに逆転の2ラン本塁打を叩き込む。
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山田哲人
打った瞬間にホーム側の観客は一斉に立ち上がり、打球がフェンスを越えたと見るや地鳴りのような歓声が轟く。先ほど「いいものを見せてもらった」と喜んでいたファンも、今度は「歴史的な瞬間に立ち会った」と感動していた。
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