それを見守る側の者たちは、まずは2015年の1年を振り返ってみようという気持ちにもなる季節でもある。
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■2015年の甲子園、センバツ制覇の敦賀気比、夏は東海大相模
「甲子園」ということにスポットを当てれば、春のセンバツでは北陸勢としては初めて敦賀気比が全国制覇を果たした。相手は北海道の東海大四。こうした顔合わせの決勝は明確に、高校野球の地域差がなくなってきていることを表していると言えよう。
夏も、東北勢の仙台育英が決勝進出を果たし、東海大相模に敗れはしたものの、その力強さは強烈な印象を残した。また、春夏ともに東海大の系列校が決勝進出を果たしたということも非常に興味深いことでもある。
■東海大付属校の躍進と象徴的なユニフォーム
そういう意味では、東海大を象徴するといってもいい、タテジマに独特の筆記体で「Tokai」の文字のユニホームは、基本デザインは大学のものを踏襲する形となっているが、実際には、地色などは微妙に異なっている。
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ちなみに、東海大四よりも東海大相模の方が、地色のブルーは濃い。聞けば、この色は染め抜きということで、その時によって微妙に異なるらしい。しかし、東海大相模のブルー地の濃さは印象的だ。特に、今年のように強さを発揮すると、やはりユニホームは、格別相手に対しての威力となってくる。
仙台育英のグレー地のユニホームも、すっかり甲子園に定着してきている。胸に大きく「IKUEI」の文字と、紺の基本色に赤の2本ラインと白のラインは慶應義塾大のそれにも似ている感じである。この夏も、ロッテ入りが決まった平沢大河や佐藤世那の活躍で、決勝に進出。近年の仙台育英は、出場すれば上位に残っているという印象が強い。
■2015年高校野球、関東勢の粘り強さ光る…センバツの浦和学院、常総学院、夏の関東一、早稲田実、花咲徳栄
今年の甲子園の上位校を見てみると春は、決勝進出の2校のほか、浦和学院と大阪桐蔭の東西の近年常連校がベスト4、ベスト8には常総学院、静岡、県岐阜商、健大高崎と関東東海地区勢が健闘した。
夏は、準決勝では関東一と早稲田実と東京勢が2校残り、ベスト8には花咲徳栄、秋田商と九州国際大附に興南と東日本勢、ことに関東と東北勢の健闘が光った。今年に限って言えば、関東勢は質が高かった。3回戦で敗退したものの作新学院や健大高崎の試合ぶりも見事だった。健大高崎は春も夏も甲子園で2勝して、すっかり甲子園で勝てる常連校という印象を与える存在になった。
春の覇者、敦賀気比は、夏も出場して明徳義塾を下したものの、2回戦で花巻東に敗れた。しかし、新チームとなった秋季大会では北信越大会を制し、11月の明治神宮大会でも準優勝を果たした。ほとんど前年メンバーが入れ替わった中で、変わらぬ実績を出せるところに、安定感が感じられる。来春には連覇の期待がかかるだけに興味深い。
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この敦賀気比と宮城県の仙台育英や岩手県の花巻東などを先頭グループとして、かつては寒冷地と言われた北陸や東北勢、北海道勢の躍進が目立つ近年の高校野球。明らかに、勢力構図は動いていると言えよう。
もはや、高校野球に地域差はほとんどなくなったといっていいのかもしれない。
■東海地区の活躍に期待
逆に、かつては王国と言われた愛知県を筆頭とした東海地区はやや低迷しているという印象も否めないところもあったが、今年は県岐阜商の高橋純平が注目を浴び、春夏連続出場の静岡が春は準々決勝で敦賀気比に、夏は初戦で東海大甲府に敗れたものの、スケールの大きな打線の迫力は強く印象を残した。
また、5年ぶりに甲子園に戻ってきた全国一の勝利数を誇る中京大中京も、3回戦で関東一にサヨナラ本塁打で敗れたものの、緊迫の息詰まる0対0の投手戦は、この年の甲子園では印象に残った好試合だった。
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■2015年、高校野球100年の歴史
また、高校野球全国大会開催100年となった年に、野球発祥の地と言われている愛媛県から松山東が21世紀枠ながら82年ぶりの出場で、創部以来124年目の全国初勝利を記録した。また、夏には第1回大会の優勝校でもある京都に中の流れを汲む鳥羽が出場したのも縁と言っていいのではないだろうか。
また、来年のセンバツには第1回選抜中等学校野球大会優勝の高松商が、秋季四国大会で優勝し、出場をほぼ確実にしている。このことは、100年を経た高校野球の新たな一歩目にふさわしいともいえるのではないだろうか。
今年を振り返りながらも、早くも心は来春へ飛ぶ思いだ。