日本一大きな大仏に石切場跡に彫られた百尺観音、参道のあちこちに見られる千五百羅漢、小さな地蔵が山のように積まれているお願い地蔵尊。細かいことはさておき、これらの石像はパッと見ただけでも、感動をおぼえる。それくらいのインパクトがあるものばかりだ。
●日本一の大仏様
最も有名なのが、大仏だろう。大仏といえば、奈良の東大寺や鎌倉の高徳院の大仏を思い浮かべる人が多いと思う。だが、この日本寺の大仏も、これらの大仏に勝るとも劣らない魅力がある。
なぜならこの大仏は、石仏坐像の大仏として日本一の大きさを誇っているのだ。東大寺の大仏は18m程度であるが、日本寺の大仏は31mもある。ブロンズ立像世界一の牛久大仏には適わないが、それでも圧巻の大きさである。
●百尺観音
個人的には、百尺観音がとてもよかった。石切場の岩肌に直接彫られた観音様は、大きさ、存在感ともに素晴らしく、まるで異国の遺跡巡りにでもやってきたかのような錯覚を起こした。
というか異国の遺跡巡りなんて、筆者の場合はアユタヤくらいしか行ったことがないので、それを思い出した。それくらいにスケールが大きく、奥深いものを感じさせる存在であった。
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百尺観音。これはスケールがでかいです
●東海千五百羅漢
今回の山旅で最も印象深かったのは、千五百羅漢での観光客のやり取りだった。鋸山日本寺には、千五百五十三体の小さな石仏(羅漢)がある。
「羅漢」と聞いてもピンと来なかったが、日本では五百羅漢が有名で、世界的には中国の八百羅漢が有名らしい。鋸山の千五百五十三という数字は、世界一だという。その表情はまさに千差万別であり、恐ろしい表情から滑稽な表情まで様々だ。
近くを歩いていた女性の観光客が、一体の羅漢の顔を見てこうつぶやいた。
「ほら、あの顔、野球選手の誰かに似ている。ほら、誰だっけ、あの…」
「長嶋茂雄さん?」
「違う、違う。ほら、怪獣みたいな名前の…外国でやってた…」
ゴジラの愛称で親しまれた松井秀喜氏のことを言っているのだろう。筆者のすぐ近くでやり取りをしていたので、口添えしたくなる。言おうか言わまいか迷っている内に、その女性は答えにたどり着いた。
「ああ、モスラ!」
「そうそう、モスラ!」
違うだろ、ゴジラだろ…と思いつつも、あまりの珍回答に吹き出しそうになり、それをこらえるのがやっとであった。