【THE INSIDE】この秋、東海地区で吹きまくった“ミラクル至学館”旋風 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE INSIDE】この秋、東海地区で吹きまくった“ミラクル至学館”旋風

オピニオン コラム
初回に得点を重ねて笑顔の至学館
初回に得点を重ねて笑顔の至学館 全 12 枚 拡大写真
8月のリオデジャネイロ五輪女子レスリングでは、日本代表メダリストすべてが至学館大の卒業生もしくは在校生だった。また、平成16年度卒業でこれまで金メダル3個、銀メダル1個を獲得した吉田沙保里選手が11月1日に同大の副学長に就任したことも話題となった。

至学館大は中京女子大時代から数えて今年で創立111年目になる。良妻賢母の家庭婦人を育てていくのが学校の方針だったが、陸上競技や女子バレーボールなどは強豪校として知られていた。

■共学化で始まった野球部

そんな中京女子大は附属校も中京女子大附として存在していた。しかし、時代の流れで大学も附属校も共学化されていくなかで、至学館大と校名を変更。附属校も至学館高校となった。そして野球部も創部されて、甲子園を目指すという姿勢でスタートした。

その当初から監督として指導していたのが、中京(現中京大中京)→中京大を経て、明秀日立などで指導をしていた麻王義之監督だった。

至学館・麻王義之監督(左)

もっとも野球部を強化するためというよりは、「男子生徒を指導できる体育教員」ということが大前提で2005年に共学となった際に、体育教員として赴任。2006年の創部に伴って監督に就任した。とは言え学校がグラウンドを提供することはなく、元々が女子校でもあり、校庭とも呼べないような狭いスペースでの練習が日常という環境だった。

学校としても「是が非でも甲子園へ出場してくれ」という姿勢ではなく、野球部もあくまで学校内の部活動のひとつという位置づけだった。それでも、2011年夏に愛知大会で勝ち進んだ。

準決勝では豊川を振り切り、決勝では強豪愛工大名電に逆転勝ちして甲子園に出場を果たしている。それだからと言って練習環境は今も変わっていない。そんな至学館の野球部が、来春のセンバツのかかる秋季大会でも再び快進撃を見せた。

至学館ベンチ

秋季県大会では1回戦で愛工大名電に2-4から8回に追いついて、延長戦の末10回サヨナラ勝ち。2回戦では半田工を7-1で下すと、3回戦では中部大春日丘に1-0と辛勝。そして準々決勝の相手は夏の代表校で、この夏休みも二次予選の名古屋市内大会で1位となっている東邦だった。初回に4点を奪ったが、9回に6点を返され4-7で迎えたその裏、4点を奪い返して逆転サヨナラ勝ち。

準決勝は、桜丘に完封負けを喫したが、東海地区大会進出を賭けた3位決定戦では享栄に先行されつつも、じわじわと返して同点で迎えた9回に1点を奪ってサヨナラ勝ちを決めた。これで、いわゆる私学4強のうちの3校を下したことになった。

■「どんな時でもあきらめない」

2011年秋以来の出場となった東海地区大会では、1回戦で三重県2位ながら優勝候補の一角に挙げる人もいたくらいの実力校・菰野に対して、初回に7点を奪う猛攻で9-0と快勝。翌日の2回戦では岐阜県1位の多治見に対して、今度は接戦となったが何とか競り勝った。

これでベスト4進出となった。準決勝の相手は愛知県私学4強の残るひとつで、全国の名門校と言っても過言ではない中京大中京。

「力は、明らかに相手が上。普通に考えたら、10回やって1回勝てるかどうかという相手」と麻王監督は話していたが、「この子たちは、どんな時でもあきらめないで一生懸命にやっていく」という姿勢が功を奏した。

9回2点差で走者なしという場面から、相手失策と死球をきっかけに、途中出場でリリーフのマウンドに立って5番に入っていた新美涼介君が渾身の一振りで中越二塁打を放って同点とした。続く中根君も、途中からどちらかというと守備の選手という位置付けで入っていた選手だが、思いを込めた一打がサヨナラ打となった。

歓喜のサヨナラ勝ちの至学館

決勝は静岡に力負けしたものの、東海地区大会準優勝。来春のセンバツはほぼ当確と言っていいだろう。

麻王監督は、「ハッキリ言って、練習環境としては県立高校よりも悪い。そんななかで、いつもは選手たちが空いているところを見つけてはジャンプして足腰を鍛えたり、小さな鳥かご(バッティングゲージ)で交互に振り込んだりと、それでもあきらめないでやってきています。それを野球の神様も見ていてくれたんでしょう。これが“ザ・高校野球”ですよ」と試合後はイカツイ表情を崩して、目頭を真っ赤にしながら選手たちの思いを語っていた。

来年1月のセンバツ代表校発表が待たれるが、甲子園に出場となれば、それまでの勝ち上がり方が話題となることは間違いないであろう。“ミラクル至学館”が甲子園でどんな戦いをするのか、今から楽しみである。

《手束仁》

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