大会が現行のスタイルになってからアジア勢として初めて、鹿島アントラーズが決勝へ駒を進めたこともそうだが、FIFA主催の大会で史上初めてビデオ判定が導入されたのだ。
激しい攻防が続くなかで試合が中断したのは前半30分だった。西大伍がエリア内で倒されたことに対して、主審がビデオ判定を要求。映像を確認した主審はペナルティースポットを指差し、鹿島にPKを与えた。アトレティコ・ナシオナル(コロンビア)陣営は抗議するが判定は覆らない。
このPKを土居聖真が冷静に決めて鹿島が先制した。
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「キッカーは何人かの候補がいて、自分もその中に入っていました。誰もボールのところに行かなかったので、自分が持っていった。自信を持って蹴った。駆け引きで勝ったと思う」
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■石井監督「流れが途切れてしまうのはどうかな」
テクノロジーの恩恵を受ける形になった鹿島だが、ビデオ判定の導入には戸惑いの声もある。石井正忠監督は試合が一旦中断して、流れが断ち切られることに難しさを感じていた。
「しっかりと判定してもらえれば公平な形でジャッジができる。ひとつのシステムとしては良いかなと思う。だが何度も繰り返されるようであれば、試合の流れが途切れてしまう」
先制点が試合の中で占めるウェイトは大きいので、それが取れたことは有効だったと思うと石井監督。だが、ビデオ判定については「長い時間をかけずに判定できれば、もっと良い形になる」と今後の課題にも言及した。
■ルエダ監督「過信があったかもしれない」
ビデオ判定によるPKで先制点を失ったナシオナル。試合後の会見でレイナルド・ルエダ監督は、「相手の選手とぶつかった場面はあったが、故意ではなかった。先制点を奪われたことで秩序が乱れてしまった。いつもは秩序を守ってプレーしているが、今日はリスクを冒し、そこを相手に利用されてしまった」と嘆いた。
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あの1点が試合に与えた影響は大きいと話すルエダ監督。だが同時に、前半あれだけ多くのチャンスがありながら決めきれなかったことも、勝敗に大きな影響を与えたと振り返る。
「我々は過信していた部分もあったかもしれない。この結果に苦い思いを感じている。彼らは効率的にゴールしたが、我々にはできなかった」
■PK後の冷静な対応が光った鹿島DF
ビデオ判定の導入には賛否両論あるかと思うが、この試合に関しては、思わぬ形でスコアが動いたあとも冷静さを保ち続けた鹿島DFの統制を称えるべきだろう。
ナシオナルのマテウス・ウリベは、「ビデオ判定が試合の流れを決定づけた」と話す一方で、「それだけでなく鹿島がとても秩序や規律を保ったプレーを続けたことが、こういう結果になったと思う」と鹿島の規律を賞賛した。
これまでなら流されていたプレーでもPKになる可能性が示された直後、鹿島DFは互いに意思統一を図り、不用意なファウルは与えないよう集中力を高めた。昌子源を中心に統率が取れた鹿島DF陣は、ナシオナルの猛攻を最後まで跳ね返し続ける。
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ナシオナルが圧力を強めてきても浮足立つことなく、最後まで守りきった鹿島。石井監督はこれまでの取り組みが実を結んだ勝利と語った。
「まずチームとしてしっかりした守備をするということを、このクラブはやり続けてきました。試合中に選手たちがベンチを見て指示を仰ぐのではなく、選手たちが試合中に判断しながらプレーするチーム。慌てることなく、うまく対応できたと思う」
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開催国王者として世界を驚かせた鹿島。18日の決勝ではレアル・マドリード(スペイン)対クラブ・アメリカ(メキシコ)の勝者と対戦する。国内タイトル18冠を誇る常勝軍団は新たな勲章を手に入れられるか。
ナシオナル戦でダメ押しの3点目を決めた鈴木優磨は、「鹿島は常に勝利を求められるクラブです。そこはレアル・マドリードと変わりません。次はもう決勝なので、疲れとか関係ないくらい楽しみです」と決勝を心待ちにする。