アメリカが戦っていた1次ラウンドC組、2次ラウンドF組は地上波での放送がなかったため、今回のアメリカ代表がどのようなチームか分からない人も多いと思う。そこで今回は駆け足になるが先発が予想される野手を中心に選手を紹介していきたい。
■優先したのは大物より適材適所
今回のアメリカ代表は期待されたクレイトン・カーショウ、マックス・シャーザーが出場しなかったため歴代でも地味な代表チームと言われた。だが2次ラウンドでは苦戦しながらも前回王者ドミニカ共和国を破り、2大会ぶり2度目のベスト4まで勝ち上がっている。
実際は地味というより、これまであった「取りあえずビッグネーム呼んどけば良いんだろ」な態度を改めたら、結果こういう人選になったと見るのが正しい。
捕手は昨季ヤディアー・モリーナの9年連続受賞を阻み、ついに初のゴールドグラブを受賞したバスター・ポージー。そしてテキサス・レンジャーズのジョナサン・ルクロイが併用される形になっている。
一塁手はカンザスシティ・ロイヤルズの主砲エリック・ホズマー。2次ラウンドのベネズエラ戦で勝ち越し2ランを放った打撃と、ゴールドグラブ賞3度受賞の守備力もある。もともとはポール・ゴールドシュミットが一塁手の1番手で、ホズマーは代打の切り札とする案もあったが本大会に入ってからのコンディションなどもありホズマーがレギュラーになった。
二塁手はリードオフマンでもあるイアン・キンズラー。30本塁打30盗塁を過去に2度達成している。昨シーズンもデトロイト・タイガースで打率.288、28本塁打、83打点をマークした。
三塁手はノーラン・アレナド。コロラド・ロッキーズの若き主砲にして、ナショナル・リーグ2年連続二冠王(本塁打、打点)。守備でもメジャーデビューから4年連続ゴールドグラブ賞を獲得している。
ただし、今大会ではWBCにかける思い入れが強すぎるのか空回りが続き、上半身だけでバットを振り回しているような打席が多い。外角低めの変化球を追いかけて三振する姿も頻繁に見られる。
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バッティングの不調が影響してか得意なはずの守備でもミス。2次ラウンドのプエルトリコ戦では決勝点につながる悪送球が出た。
厳しさと温かさを併せ持った指揮官として知られるジム・リーランド監督。初戦で3番起用した以外は、残り5試合すべて打てなかろうがアレナドを4番に固定してきた。日本との準決勝でもその考えに変わりはないだろうか。
遊撃手はサンフランシスコ・ジャイアンツのブランドン・クロフォード。ゴールドグラブ2年連続受賞の堅い守備が持ち味だが、2015年にはそのポジションで最も優れた打者に贈られるシルバースラッガー賞を受賞している。今大会も下位打線での起用で打率.444。調子が上がらない野手陣の中で数少ない好調選手だ。
外野はクリスチャン・イエリッチ、アダム・ジョーンズ、アンドリュー・マカッチェン。
イエリッチはマイアミ・マーリンズでイチローの同僚でもある。今大会は打率.350と打撃好調。初戦は代打での出場だったがコンディションの良さで以降は先発に定着した。
ちなみにイエリッチの母方の祖父は日本人。WBCのレギュレーション的には日本代表として出場することも可能だった。
ジョーンズは今大会で最も印象的な活躍をしている選手のひとり。打率こそ.222と低いが2本のホームランはベネゼラ戦での同点弾、プエルトリコ戦での1点差に追い上げるソロ。守備ではドミニカ戦でマニー・マチャドのホームランを阻止している。
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マカッチェンはメジャーを代表する俊足巧打の外野手。2013年にはナ・リーグMVPも獲得しているが、昨シーズンは成績不振に陥った。復活を期す今シーズンだが、ここまでWBCでは打率.154と波に乗り切れない。
代打あるいはDHにメジャー屈指の飛ばし屋ジャンカルロ・スタントン。もともとはレギュラー外野手で期待されたものの、調子が上がらず限定的な役割となった。決勝ラウンド進出が懸かった2次ラウンドのドミニカ戦では四回に勝ち越し2ランを放っている。
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球を遠くへ飛ばすことにかけてはメジャーでもトップ中のトップ。準決勝、決勝の舞台になるドジャー・スタジアムは投手有利な球場と言われているが、ここでスタントンは場外ホームランを打ったことがある。
今大会のアメリカは野手14人中9人がゴールドグラブ受賞経験あり。短期決戦向きの堅い野球を前提に選出したのが見て取れる。
■個性派がそろったブルペン
カーショウ、シャーザーが出ないことで先発投手が手薄という声もあったが、プエルトリコ戦で失点するまで先発陣は自責点0を4試合続けていた。
準決勝の日本戦ではワシントン・ナショナルズのタナー・ロアークが投げてくる。当初はタンパベイ・レイズのクリス・アーチャーと思われた。アーチャーもレイズのキャンプに戻り再調整しながら決勝ラウンドの出番を待っていたが、チームから「登板する必要がなくなった」と連絡が入ったことをツイッターで明かしている。
I received a message this morning that I am no longer needed to pitch in the final round of the WBC. I will not be leaving camp as I thought
— Chris Archer (@ChrisArcher22) 2017年3月19日
I had an amazing time representing our country wish I could take the ball one more time but it's out of my control. We're in good hands tho!
— Chris Archer (@ChrisArcher22) 2017年3月19日
ロアークは150キロのツーシームをコースにコントロールしてくる右腕。チェンジアップの変化量も大きく調子が良ければ打ち崩すのは難しい。
アメリカのブルペンは本格派、軟投派、変則フォームとバリエーション豊か。
サム・ダイソンは150キロで手元に来て変化する高速シンカーの使い手。デビッド・ロバートソンはマリアノ・リベラ直伝のカットボールを操る。砲丸投げのように球を掲げるテイクバックから、スリークォーターで160キロの速球と140キロ台のスライダーを投げ込んでくるネイト・ジョーンズは、昨シーズンのアメリカン・リーグ最多ホールド王。
サイドスローは球が遅いなんて決めつけてはいけない。マイケル・ギブンズは横投げで最速158キロの速球を投げる。球の出どころが分かりにくい変則のサイドスローから、ボールが出てくるパット・ニシェクは一度見たら忘れられない。
平均球速は150キロに満たないが安定した投球により、メジャー11シーズンで7度の60試合以上登板があるタイラー・クリッパード。そして昨シーズンのMLBポストゲームで大活躍したアンドリュー・ミラー。
早い回にリードを奪われると彼らが小刻みに登場して的を絞らせない継投が続く。
とにかく日本は先手必勝。先にリードを奪って全員で守り抜きたい。