なぜ『ブンデスリーガ』に観客が集まるのか…特殊なリーグ構造と歴史を紐解く
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2つ目にあげられたのが“社交性”だ。
「スポーツフェラインに参加している高齢者がフェラインに来る主な目的は、『スポーツではなくお喋りなのよ』と話す方もいらっしゃるくらいです」
会話だけではなく、BBQ、クリスマスパーティーなどもフェラインでは頻繁におこなわれる。スポーツではなく社交が目的である会員も多いという。あるアンケート調査では、「フェライン活動とは社交のことである」に85%のひとが賛成し、「スポーツフェラインには社交的な交流がある」に3分の2のひとが賛成している。
この社交性の由来にも、歴史的な背景があると釜崎氏は指摘する。
「19世紀のドイツにはドイツ体操と呼ばれる土着の文化がありました。彼らはイギリス生まれのスポーツを敵国文化として排斥したわけですが、その強力な排斥運動にもかかわらず、スポーツが定着した背景には、スポーツが社交の手段として広く認知された経緯があったのです」
当時は、ドイツ体操の内部においてだけではなく、社会全体においても、階級と集団(性別や国籍など)の分裂が深刻な社会問題になっていた。そのため、多数の一般むけ雑誌で社交性がテーマにされるなど、社交はメディアにも支持されたひとつの時代精神になっていたのである。その社交の手段として大きな力を発揮したのがスポーツだったわけだ。
なかでもサッカーは、ドイツに住むイギリス人と地元ドイツ人の交流の場として、さらには教養市民(教師や司祭)と経済市民(ジャーナリストやエンジニア)の交流の場として、定着していったという。
3つ目にあげられたのは“自律性”。
そもそもフェラインは、同業者組合とキリスト教の信心会を前身としながら、「結社の自由」を求める政治運動のなかで結成された。そのフェラインという言葉がドイツ語のなかで明確な位置づけを与えられたのは、愛国主義的な団体が多く形成されたナポレオン戦争の時代であった。そのため、フェラインは、クラブや連合といった言葉よりも政治的な意味合いをもつといわれる。
戦後、ドイツの民法21条や基本法9条には、フェラインの結成が国民の「権利」と明記され、その「自律性」と「自己決定権」が保障されてきた。こうした法整備に支えられながら、スポーツフェラインは50年代以降の公的なキャンペーンと公的な支援によってその数を倍増させてきたのである。
商業主義化が嘆かれる近年でも、ボランティアで運営に関わるひと、社交的な催し物のみに参加するひと、そうした非活動会員は、2700万人の全会員のうち、旧西ドイツ地区で50%、旧東ドイツで30%近くにのぼるという。
「現代のドイツ人の観念のなかにあるフェラインは、『伝統』と『商業主義』がせめぎ合う『場』なのです。その『伝統』に含意されている神話、社交性、自律性、ボランタリーが、歴史的に形成されてきたフェラインの『固有性』を構成しています。つまり、フェラインに独自な性格です。この『固有性』というドイツ語が、同時に『財産』も意味しているように、それらの固有性こそが、ドイツのサッカークラブの価値になっているのです」
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《大日方航》
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