なぜ同窓会の地がバルセロナだったか。別に僕がスペインの高校を卒業したからではない。日本生まれ、日本育ちで高校も大学も日本だ。
僕が半年弱バックパッカーとして世界放浪の旅に出ていたとき、高校時代仲の良かった友人たちは世界各地で留学をしていた。それゆえ、バルセロナという立地が同窓会の地に程良かったのだ。
年末、バルセロナにて4人で会う予定だった。僕は中南米の旅を終えスペインに向かう予定で、1人はイギリスのロンドンに留学中、1人はフランスのマルセイユに留学中、1人は冬休みを使ってヨーロッパ周遊という背景だ。
結局、フランス留学中の才女とは予定が噛み合わなかったので、男3人でスペインからジブラルタル海峡を渡り、モロッコにでも旅行に行くか、という話に落ち着いた。
今回は、日本から来る友人を、イギリス留学中の友人と共にバルセロナにて待っていた時の話である。
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アントニオ・ガウディ建築、カンプノウでFCバルセロナの試合を観戦するといったバルセロナ観光もおおよそ終え、日本からの友人が来るまで丸4日間ほどが残った。
ハッキリ言って暇だった。
手持無沙汰とはこのことだ。しかし、バルセロナの「フィートアップイエローネストホステルバルセロナ」は、僕達の所在なげな両手に仕事を与えてくれたのだ。
このドミトリー形式の安宿は、FCバルセロナの本拠地カンプノウスタジアムから徒歩数分と、試合観戦予定だった僕達にぴったりだったので宿泊を決めた。
バルセロナのホステルは総じてレベルが高く、多分に漏れずこの宿のカラフルなドミトリールームも清潔で、非常に快適だった。一泊11ユーロ(約1380円)程度だったように記憶している。
そしてこの宿で特筆すべきは、ビリヤード台と卓球台が設置してあることだ。暇を持て余した僕達は、吸い込まれるようにビリヤード台に張り付き、ビリヤードを練習した。
両方ともビリヤードをするのは初めてで、最初はなかなか上手く打てなかったが、夜通し打ち続けているうちに、それらしい形で遊べるようにはなった。ビリヤードに飽きたら卓球もある。
娯楽の極みのようなこの環境。
宿のスタッフも「なんでお前らは外に出ないんだ?」と軽口を叩きながらも、僕達と共にビリヤードをしたがった。
ビリヤードをしていくなかで仲良くなったスペイン人と共に夜食に生ハムをほうばる。こういう過ごし方もありだな、としみじみ思った。
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