個人タイムトライアルの遅れを山岳で取り戻す。それだけ上りは圧倒的な速さだった。パンターニのダブルツール達成はそれまでの常識を覆すほどの衝撃だった。とにかく伝説に名を残す希有な選手で、独特の容貌はいつしかスキンヘッド姿がトレードマークとなった。ニックネームは「イル・ピラータ＝海賊」。ドロップバーの一番下を持ってダンシングで上るスタイルは真似できるものではない。
マルコ・パンターニ8人目のダブルツールを目指すコンタドールも、小柄な体格や上りを得意とするところはパンターニにちょっと似ている。コンタドールの挑戦には期待したいが、ジロ・デ・イタリアをパスしてツール・ド・フランスに照準を合わせてくるライバルは複数存在して、そうたやすい目標でないことは明らかだ。
ところで、プロ野球なら「トリプルクラウン」、テニスなら「グランドスラム」とか言われるが、なんでダブルツール（Double Tours）なんだろ。ダブルジロではダメなの？ 実際のところは分からないが、イタリアの新聞が見出しで「Double Giro」と表記していた記憶もある。もしかしたら、一般的には「早慶戦」だけど慶應の学生たちが「慶早戦」と呼ぶような類いのものじゃないのかな。
ちなみに「Tour」は「一周する」という意味なので、ダブルツール（Double Tours）は「二重」。たとえばバレエでは「2回転ジャンプ」のことらしい。ヨーロッパのメディアはダブルツールと表記せず、不思議なことに「Giro-Tour」だ。まんまじゃん！
【やわらかスポーツCYCLE】
