■あまりに劇的な幕切れ…中京大中京×関東一
緊迫の投手戦という言葉がぴったりだったのは、中京大中京と関東一の試合だった。
中京大中京の上野翔太郎君は、174cm74kgで決して大きくはないが引き締まった、鍛え上げられたという印象の選手だ。ピンチにも、顔色を変えることなく冷静に投げ込んだ。ことに、関東一の注目のリードオフマン・オコエ瑠偉君や中学時代には愛知西シニアでバッテリーを組んでいたという鈴木大智君との対決は、いずれも1球1球が手に汗握る、見ごたえのあるものだった。
初回には中京大中京が満塁の好機で、6番佐藤勇基君が放った会心の一打は中越打かに思えたが、背走したオコエ君がジャンプ一番空中で掴み捕るというスーパーファインプレーも飛び出した。この一打が抜けていたら、試合は全く別の展開になっていったことであろう。
関東一の米澤貴光監督は先発の阿部武士君を4回であきらめ、東京大会の時から「秘密兵器」と言っていた16番の金子尚生君を投入。その金子君が一世一代の好投で、上野君との緊迫の投手戦となっていった。8回まで16個の0が並んで、延長戦も思い描いていた。9回の中京大中京は1番からの好打順で、二死一二塁まで攻めたが結局得点にならず。
そしてその裏、一死から関東一の5番長嶋亮磨君の打球は、左翼ポール際そのままスタンドに入っていった。満員の観客もベンチも、一瞬何がどうなったのか…という感じでわずかな静寂があった。そして、一塁側アルプス席も内野席もウォーッ! と、地鳴りのように歓声が沸き上がった。中京大中京バッテリーは、その場で呆然と立ち尽くしていた。
あまりにも劇的な試合、見つめていた我々も心を奪われた。何かを話そうとすると、涙声になってしまいそうな、そんな雰囲気もあった緊迫の試合、劇的な幕切れだった。
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