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【THE REAL】初勝利に導かれた涙の意味…湘南ベルマーレを再加速させる指揮官の眼力とマネジメント力

オピニオン コラム
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■いまできることを懸命に

東洋大学から加入して3シーズン目。同期の菊地やDF三竿雄斗が1年目からレギュラーとして活躍する一方で、コツコツと努力を積み重ねた石川は、2年目の昨シーズンは11試合で先発の座を射止めた。

日々の練習は絶対に嘘をつかない。自分自身を信じろ。言葉に熱い檄を込めた曹監督は、敵地で行われた3月12日のサンフレッチェ広島戦の映像を石川の前で流しはじめた。

後半アディショナルタイムに不運なオウンゴールを許し、2対2で引き分けた一戦で、石川は後半8分から途中出場。4バックで組んだ最終ラインの前で、アンカーとして球際でアグレッシブに挑み続けていた。

「広島戦のプレーがすごくいい、ヒントになると、曹さんは言ってくれました。あくまでも自分なりの解釈ですが、結果に対する責任はまだ負えませんけど、しっかりと自分らしさを出してプレーすることが責任だと思ったんです。積極的にボールを奪いにいって、しっかりと前の選手に当てる。いま現在の自分にできるプレーを一生懸命すればいい。そう思うと、気持ち的にすごく楽になったんです」

言葉には直接出さなかったが、指揮官は「試合の結果に対する責任は監督が取る」というメッセージも込めていた。しっかりとそれを受け止めた石川は、もう迷わないと決意を固める。

迎えた4月30日。敵地に乗り込んだ横浜F・マリノス戦。1997年5月3日を最後に19年間も勝てていない天敵に挑んだ大一番で、石川が任されたポジションはサンフレッチェ戦と同じアンカーだった。

システムは「4‐3‐3」で、石川は逆三角形で組んだ中盤の底を務めた。代名詞でもある「3‐4‐3」を変えた理由は、何もマリノスに合わせたわけではない。曹監督が力を込める。

「失点したくないと怖がるあまりに、3バックではなく5バックになっていた。それでは湘南の攻撃的なスタイルは出せない。選手たちに『攻めよう』というメッセージを伝えたつもりです」

もちろん「攻める」には守備も当てはまる。最終ラインを高く保ち、前線から絶えずボールホルダーへプレッシャーをかける。攻守両面で相手よりも人数をかけることが「湘南スタイル」の一丁目一番地だからだ。

そして、右サイドバックには奈良輪雄太が起用された。ジュニアユースからマリノス一筋で育つもトップチームには昇格できず、筑波大学を経て2010シーズンにJFLのSAGAWA SHIGA FCに加入した。

すぐにレギュラーを獲得し、JFLの新人王にも輝いた。Jリーガーへはい上がっていくための第一歩を踏み出したが、親会社・佐川急便の都合で、チームは2013年1月をもって解散してしまう。

藁にもすがる思いでマリノスの練習に参加すると、JFLでの成長の跡が認められてプロ契約を勝ち取る。左右のサイドバックを務められる貴重なバックアッパーとして、2シーズンで27試合に出場した。



奈良輪雄太 湘南ベルマーレ webサイトより


もっとも、好事魔多し。左ひざの内側側副じん帯を損傷したことも響いて、昨シーズンはわずか1試合の出場にとどまる。複数年契約が切れた昨オフ。マリノスからは契約延長のオファーも受けた。

しかし、奈良輪はあえてそれを固辞。ベルマーレを新天地に選んだ。8月には29歳になる。ベテランの域にさしかかるなかで、心技体を根本から鍛え直したい。サッカー人生を見すえたうえでの決断だった。

ベルマーレの厳しさを、マリノス時代のチームメイト、MF熊谷アンドリュー(現ツェーゲン金沢)から聞いていたのだろう。2014年夏に期限付き移籍でベルマーレに加わった熊谷は、初練習で目を丸くしている。

「ここはサッカーではなく、格闘技をしているのかと思いました」

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《藤江直人》

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