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【THE REAL】初勝利に導かれた涙の意味…湘南ベルマーレを再加速させる指揮官の眼力とマネジメント力

オピニオン コラム
湘南ベルマーレ 参考画像
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■試合後ロッカールームで

マリノス戦へ向けた全体ミーティングで、曹監督は0対2で苦杯をなめた3月20日の浦和レッズ戦の映像を何度も見せてきた。なぜ負けた試合の映像なのか。石川がその意図を明かす。

「負けたけどチーム全体で浦和相手にプレッシャーをかけられていたし、(日本代表GKの)西川(周作)さんが苦し紛れでクリアをする場面はそんなにないと、曹さんは言っていました。1ヶ月前はこういうプレーができていたんだと」

メンバーが大きく変わっている以上は、永木やU‐23日本代表のキャプテンを務めるDF遠藤航(レッズ)が在籍していた、昨シーズンの映像を見せても何ら意味をなさない。

GK秋元陽太(FC東京)とMF古林将太(名古屋グランパス)も抜けて、周囲の誰もが苦戦必至と予想していた今シーズンの戦いへ。曹監督はこんなビジョンを描きながら臨んでいた。

「移籍した選手たちはもちろん大事な存在だったけれども、僕は彼らに『主力』という言葉を使ったことは一度もないし、彼らがいないから何もできないとも思っていない。キャプテンと副キャプテン(遠藤と古林)が抜けたことはチームが新しく生まれ変われるチャンスでもあり、彼らが認められて移籍していった後に、我々がどのようにふるまえるかが求められているとも思っている」

荒波に見舞われても絶対にぶれない、大きくて頼れる指揮官の背中。現時点における100%以上の力を出し切り、ベルマーレの原点に立ち返ってもぎ取った今シーズン初勝利に、指揮官もまた目を赤く腫らしていた。

「勝ったことで選手たちが生まれたばかりの子どものような表情を浮かべながら、ロッカールームに帰ってくるのを見ると、監督という仕事をしていて本当によかったと。子どもじみた言い方になりますけど、今日のアイツらは魂をもって、相手を待ち構えるのではなく、自分たちから仕掛けていってくれた。いま現在の世界のフットボールが向かう方向、球際のバトルや運動量、スピード感といったところでアイツらのマックスを出そうと頑張ってくれたことが、自分のなかでは勝ったことよりも嬉しい」

そのロッカールームで、実は知られざるドラマがあった。試合後に行うミーティングを締める役として、ようやく涙を乾かせていた奈良輪が曹監督から指名されたのだ。もちろん移籍後で初めての大役拝命だ。

「まだ興奮していて、育ててくれたマリノスへの感謝の思いや湘南の一員として結果を出した喜びをしゃべっていたら、曹さんから『長い!』とダメ出しされました」

無我夢中で話していた時間は、奈良輪によれば5分を超えていたという。ロッカールームは瞬く間に爆笑の渦に巻き込まれ、同時に中3日で敵地に乗り込むサガン鳥栖戦へのモチベーションも一気に高まった。

奈良輪、石川、そして曹監督だけではない。同じくマリノスから加入したFW端戸仁も、高山の決勝ゴールをアシストしたMF菊池大介も精根尽き果てたかのようにピッチに倒れ込み、泣いていた。

勝ったチームがボロボロになり、涙腺を決壊させる。プロの世界では異例にも映る光景は、それだけベルマーレがマリノス戦にかけていた思いが大きかったことを物語っている。

初勝利をあげても、最下位からは抜け出せない。それでもベルマーレらしさを貫くうえで、もっとも大切なものをあらためて確認できた。

指揮官を信じて全力で駆け抜けてきた道を、これから先も迷うことなく進んでいく。流された幾重もの歓喜の涙は、育んできた「湘南スタイル」を力強く再稼働させるスイッチになる。
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《藤江直人》

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