2度あることは3度ある。格言通りに今度はU-23日本代表としての「初陣」で、しかも初戦が日本時間8月5日に迫ったリオデジャネイロ五輪へ向けたサバイバル戦が、本格的に幕を開けた一戦で鮮烈な結果を残した。
「結果的にそうなっていますけど、ビギナーズラックという言葉で片づけられないようにしないと」
苦笑いした富樫はゴール以外にも得た収穫と、マリノスでの戦いから抱えている課題の両方をあげた。まずは収穫。ガーナのディフェンダーを背負いながらバランスを崩さず、正確なボールを味方へ落とし続けた。
「相手は身体能力が高いと思っていたんですけど、いざ背負ってみると思ったよりもできたというか、マリノスのディフェンダーのレベルがいかに高いかがあらためてわかりました。世界の舞台で戦ってきたセンターバックが普段の練習からいるので、よほど先輩たちのほうが強いと思いました。そういうのも生きていたのかなと思っています」
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元日本代表の中澤佑二と栗原勇蔵、そしてブラジル人のファビオ。高さと強さ、巧さを兼ね備え、Jリーガーでもトップクラスにランクされるセンターバック陣にもまれ続けた日々が、富樫の体をも鍛え上げていた。
ならば課題とは、ゲームのなかにおけるスタミナとなる。3-0のスコアとともに、対ガーナの勝利を告げるホイッスルをピッチの上で聞いた富樫にとって、90分間フル出場はプロになって初めての経験だった。
マリノスでの最長プレー時間は、柏レイソルとのナビスコカップ・グループリーグにおける63分間。後半のキックオフから早い時間帯でベンチへ下げられる理由を、誰よりも富樫自身が理解していた。
「後半になると、どうしてもプレーのクオリティが落ちてきてしまうんです。そういった部分をマリノスのフィジカルコーチにも相談して、直していきたいと思っている。今日も後半になると足に疲労感がたまってきて、運動量も落ちてしまった。単なる強化試合ではなく(熊本地震への)チャリティーマッチも兼ねていたし、だからこそ後半こそもっといいサッカーをしなければいけなかったのに、個の部分でミスが目立ってしまったことには責任を感じています」
後半アディショナルタイム。右サイドを駆け上がったDF伊東幸敏(鹿島アントラーズ)が、絶妙のクロスをニアサイドへ送る。走り込んできた富樫が右足を合わせたが、ボールはバーの上を越えていった。
「前半にもゴール前へ抜け出したシーンがあった。2点目を決められないのが、いまの自分の実力だと思っています」
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