【THE REAL】オーバーエイジ三銃士・藤春廣輝の決意…唯一のレフティーとしてスペシャルなプレーを
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コラム

敵地・埼玉スタジアムで行われた浦和レッズとの準決勝。1‐1のまま延長戦に入ってもお互いにまったく譲らず、PK戦突入の気配も漂ってきた後半13分だった。
DF丹羽大輝のバックパスが高く浮き、ガンバのGK東口順昭の頭上を超えていく。ベンチで戦況を見つめていた長谷川健太監督ですら「あっ、やっちゃった」とオウンゴールを覚悟した次の瞬間だった。
ジャンプ一番、必死に伸ばした右足のつま先をかすめ、かすかにコースを変えたボールは左ポストに命中。九死に一生を得た東口はこぼれ球をDFオ・ジェソクへつなぎ、乾坤一擲のカウンターを発動させる。
MF遠藤保仁からゴール中央のFWパトリックを介したボールが、右サイドに開いたMF米倉恒貴へわたる。その間に逆サイドをトップスピードで駆け上がってきたのが藤春だった。
まもなく120分間を戦い終えようというのに、距離にして約60mを一気に駆け上がれる走力。衰えを知らない強靭な足腰は、正確無比なシュートをも生み出す。
米倉からの山なりのクロスに、利き足とは逆の右足でダイレクトボレーを一閃させる。ガンバの勝利と決勝進出を告げる一撃が、鮮やかにゴール右隅へと吸い込まれていった。
◆A代表に上り詰める
サイドバックに必要な武器をすべて備える藤春を、日本代表を率いるバヒド・ハリルホジッチ監督もすぐに見初める。初陣となった昨年3月のチュニジア代表との国際親善試合。初めてA代表に招集された藤春は先発に名前を連ね、2‐0の勝利を告げる試合終了のホイッスルもピッチのうえで聞いた。
以来、サッカー人生の設計図に、2018年にロシアの地で開催されるワールドカップが描かれた。そして、夢へ向かっていく途中で、リオデジャネイロでひと足早く世界へ挑む機会を得た。
「世界大会というのは、自分のサッカー人生のなかで初めてなので。もちろん日本のメダル獲得のために全力でプレーしたいし、選ばれなかった選手たちの分まで、本当に100%の力を出してプレーしないといけない。この機会にどれだけ自分がやれるかというのを肌で感じて、それを生かしながらロシアの地へ行きたいと思っています」
オーバーエイジ枠の一人に内定したことが、日本サッカー協会から発表されたのが6月14日。以来、チームの内外からさまざまなアドバイスをもらった。2004年のアテネ五輪に出場したMF今野泰幸からは、こんな言葉をかけられた。
「先輩のオーラみたいなものを出すとよくないよ」
山本昌邦監督に率いられた五輪代表には、GK曽ヶ端準(鹿島アントラーズ)とMF小野伸二(当時フェイエノールト)がオーバーエイジとして招集されたが、日本は1勝2敗でグループリーグ敗退を喫した。
いわゆる「黄金世代」の小野と、アテネ世代のなかの最年長となるDF田中マルクス闘莉王(当時浦和レッズ)やMF阿部勇樹(当時ジェフ市原)たちは、学年でいえば2つしか違わない。
それでも、周囲から「谷間」と揶揄されていたアテネ世代にとてって、日韓共催ワールドカップでベスト16進出に貢献するなど、日本代表として輝かしいキャリアを築きあげていた小野は雲の上の存在に等しかった。
「今野さんも経験から言ってくれたと思うんですけど、アテネのときはオーラがすごすぎて『その人たちは絶対』という雰囲気があって、サッカーそのものも変わったらしいので。そのへんは、逆に僕たちが合わせるくらいの感じでいければいいかなと。壁を作ったら絶対にアカンと思いますし、そうなればチームの雰囲気が悪くなってしまう。年下の選手たちが遠慮しないように、それこそタメでもいいよと、むしろなめられるくらいの感じで、同期感覚で仲良くしゃべっていければいいかなと」
死闘に次ぐ死闘を経て、23歳以下のアジア王者の肩書とともにリオデジャネイロ五輪切符を獲得した今年1月のU‐23アジア選手権。芳しくなかった下馬評を覆したU‐23日本代表には、揺るぎないベースが生まれている。
塩谷、興梠、そして藤春。A代表に名前を連ねた経験と実力をもち、それでいて黒子に徹することができる性格の3人をオーバーエイジで選んだ手倉森誠監督の意図を探っていくと、おのずと次の2点に到達する。
23歳以下の選手たちだけでは埋めきれない部分を補う。同時にナイジェリア、コロンビア、スウェーデンという強敵と同組となったグループBを勝ち抜き、メダル獲得を目指すうえで不可欠なチームの和を乱すことなく、競争を促していくことでギリギリまでチーム力を高める。
《次ページ 日本時間8月5日未明のナイジェリアとの初戦》
《藤江直人》
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