【インタビュー】為末大、ランニング施設への想いと2020年に向けた課題 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【インタビュー】為末大、ランニング施設への想いと2020年に向けた課題

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新豊洲Brilliaランニングスタジアムの館長を務める為末大さん
新豊洲Brilliaランニングスタジアムの館長を務める為末大さん 全 8 枚 拡大写真
元プロ陸上選手の為末大さんが、東京・豊洲にオープンした『新豊洲Brilliaランニングスタジアム』の館長に就任した。

4年後の東京オリンピック・パラリンピックに向けて多くの施設が建設されるなか、新豊洲Brilliaランニングスタジアムはトップアスリートはもちろん、一般でも手軽に使用できるのが魅力だ。

2年前に計画が立ち上がり、全天候型60m陸上トラックのほか、競技用義足開発ラボラトリー、ランニングステーション(シャワー・ロッカールーム)が併設された新しいコンセプトの施設が完成した。

為末さんに新豊洲Brilliaランニングスタジアムへの想い、東京オリンピック・パラリンピックへの期待を聞いた。(聞き手はCYCLE編集部・五味渕秀行)

新豊洲Brilliaランニングスタジアム

自然光が入る明るいトラック

--- : 新豊洲Brilliaランニングスタジアムのオープンおめでとうございます。まず、オープニングレセプションを終えて、率直な感想を聞かせてください。

為末大さん(以下、敬称略):自分の人生でトラックを運営できる日が来るとは思っていなかったので、すごい嬉しいですね。

--- : こういう形態の施設はこれまでありませんでしたが、アイデアはどのように生まれたのですか?

為末:選手が、それがいいって言うんですよ。(通常は)義足を作るところとトラックが離れている。(走った感触を)こういう感じがするってまた工場に行って(義足の調整を)やるのを同時にやりたいんだよって選手が言うので、じゃあやってみようかというのが最初ですね。

--- : それが2年前の「TOYOSU会議」で提案されて、実現の運びとなったわけですね。為末さんにとって、この施設を作ることにしたきっかけは?

為末:このエリアでなんでもいいよって言われたら、人生のなかでいろいろスポーツはこうあるべきだとか言ったりするのですが、僕の人生の経験からして、風景を見ること以上に説得力があることはないなって思っていて。

デザインもそうです。義足は速いんだよとか言うよりも、義足を履いて速く走っている人を見たときに、やっぱり義足を履いて速く走れるんだって思うじゃないですか。

風景や実物を見ることが一番大事なことだと思っていて、僕は健常者や障がい者関係なく、みんなが誰でも使えるように日本の施設もなるべきだと。日本の施設はけっこう難しいんですね。それでまず風景を作りたいというのが大きかった。そのためには場所がないといけない。

オープニングレセプションで話す為末さん

--- : 日本での健常者スポーツと障がい者スポーツの一番の違いは何でしょう?

為末:お金の面は、これからの4年間で埋まると思うんですね。一番は知識でしょうね。知識とコーチ。コーチが少ないですね、パラの世界は。なので選手に対して流れていく知見がまず少ない。

あと選手自身とコーチを含めて、これまで強化の対象になっていなかったので、基礎的な知識が欠けがち。それが大きいですね。施設は実はけっこう使えるようになっているんですよ。

なんですけど、そういう知識も知見もないので環境をどう作ったらいいかとか、そういうのがちょっとおろそかになってる印象ですね。

--- : この新豊洲Brilliaランニングスタジアムがそういうことも含めて発信できる拠点にもなるわけですね。

為末:けっきょく同じ空気を共有することが知識とか(の共有につながり)、実際に健常者やコーチもよく来るわけですから、そういうのが一番大事かなと思います。

--- : 為末さんの実施されている「かけっこスクール」なども行われますが、一般の方にはどのように施設を使ってほしいですか?

為末:公園に行くように来てほしい。スポーツ施設に行くのはちゃんと予約して、準備してなくちゃいけないとか、そうじゃなくて公園に行くみたいにここに来て、いつでもあそこ開いてるしって。

走ってたら横にパラリンピアンも走っていて、ああやって義足で走るんだって子どもが当たり前のように思えてくれたら嬉しい。それが大きいですね。

予約をしなくちゃいけないとか、現役時代にすごく感じていた。日本の施設の使いにくさというか。

新豊洲Brilliaランニングスタジアムで走る為末さん

--- : ここは年間や月の利用契約もできますが、1回の利用から楽しめますよね。

為末:基本オープンにしています。1回500円(※)と決まっているんですけど、それでチャリンと払えば、あとは自由に走って帰っていけるようにしています。

※:新豊洲Brilliaランニングスタジアムの利用料金は1回券が学生・障がい者はワンコインの500円、一般は800円。月契約は2000円~、年契約は2万円~。

--- : リオデジャネイロパラリンピックから感じたことはありますか?

為末:パラリンピックは世界のレベルが上がって、日本は置いてかれつつありますね。だから強化をしなくてはいけない。今までは強化費があまり入っていなかったので強化しなくてもそんなに言われなかったんですけど、これからはオリンピックと同じくらい予算が割かれる。

成績を求められてくると思うのですけど、パラの強化の体制がまだ弱いんじゃないかという感じはしています。それを今後作っていかなくちゃいけない。オリンピックに関しては粛々と2020年まで行くかな。オリンピックとパラリンピックがうまく混じる状況を作って、パラの強化に貢献できるのが好ましいです。

もうひとつ起きたらいいのが、選手が強くなるのは一時的なところもあって、それよりもスポーツの文化やスポーツを通じたコミュニティーができるのが大事。それをこの場所で作っていくのは自分ができること、やっていくことです。

--- : 4年後に向けての為末さんの取り組みを教えてください。

為末:ひとつはパラリンピアンをヒーローにする。もうひとつは、アジアをスポーツでつなぐというのをやっていて、ブータンやネパールですが、選手のゆるやかなコミュニティーができればいいかな。僕は徹頭徹尾、オリンピックの強化はやらないということで何をやれるかと(笑)。

そこは(強化について協力できる)引退した選手はいっぱいいるんですね。なので、空いてるところを守るというか。三塁空いてるよ!みたいな感覚なんですよ。

一塁は人がいっぱいいるから三塁やろうかな、っていうのがスポーツでの課題。そんなイメージです。

みんなでオープニングランを行いました

--- : 2020年までに期待されることは?

為末:自分たちの社会の次のブランディングをどうするのって、日本自体が感じているんじゃないかと思うんです。経済大国になっていくとか、テクノロジーの国になるとかいろいろあると思うのですが、僕は2020年を境にたぶんナショナリズムとかが強くなってきて、各国は似た人が寄り添って固まって住もうぜ!みたいな空気になるんじゃないかって、世界中の空気がですね。

そのときに世界で一番寛容な国になっているというのは強いブランディングなんじゃないかと思っていて、そういう風に世界から見られるような何かを残していくのが一番いいことなんじゃないかと思っています。

--- : 日本はリオデジャネイロオリンピックで過去最高のメダル獲得数になりましたが、東京大会ではどうなると予想しますか?

為末:冷めた話を言っちゃうと、投下するお金とメダル数ってほぼ比例してくるんですね、研究データから見ると。だから、いっぱいお金を投下するので、獲れると思います。だけど個別の話じゃなくて投資対効果の話なので。

2020年以降で日本自体の財政が厳しくなって、強化費削られるのは目に見えてわかっているので、それは2020年までの夢としてとらえて。一方で2020年以降も日本は残っていくので、その上で2020年以降のための2020年まで何をするかが、どちらかというと僕の役割なので、それやりたい感じですね。

強化のところは(柔道日本代表監督の)井上康生くんとか、いろんな人がやってくれるので、僕は社会課題の解決で。

--- : 三塁からですね。

そうそう!三塁が空いてるってね(笑)。

●為末大(ためすえ だい)
1978年5月3日生まれ、広島県出身。陸上スプリントトラック種目での日本人初のメダルを獲得。2000年シドニー五輪、2004年アテネ五輪、2008年北京五輪と三大会連続で出場し、2012年に現役を引退。現在は株式会社侍の代表取締役を務め、ランニングスクール運営やスポーツをつうじた社会活動を積極的に行っている。

●新豊洲Brilliaランニングスタジアム
2016年12月10日オープン。所在地は、東京都江東区豊洲6-4-2。最寄駅は、ゆりかもめ新豊洲駅もしくは市場前駅。

《五味渕秀行》

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