【THE REAL】日本代表・昌子源が挑む一世一代の大勝負…常勝軍団で培われた濃密な経験を武器に | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】日本代表・昌子源が挑む一世一代の大勝負…常勝軍団で培われた濃密な経験を武器に

オピニオン コラム
昌子源 参考画像
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6大会連続6度目のワールドカップ出場へ


いままでのサッカー人生のなかで最大と位置づけられる決戦が、いよいよ近づいてきた。モードを鹿島アントラーズから、日本代表へと切り替えたのが26日の夜。DF昌子源は心地よい武者震いを感じている。

「少しずつですけどプレッシャーは感じるだろうし、緊張もするでしょうね。ただ、自分が出る、出ないに関係なく、本当に大切な試合という国民の方々がわかっていると思うので。しっかりと準備したいですね」

オーストラリア代表を埼玉スタジアムに迎えて、31日午後7時35分にキックオフされるワールドカップ・アジア最終予選第9戦。勝てば無条件で、6大会連続6度目となるワールドカップ出場が決まる。

ひるがえって引き分け以下に終われば、グループBに与えられるロシア行きの切符2枚をめぐる、サウジアラビア代表を含めた三つ巴の戦いがますますヒートアップ。9月5日の最終戦へともつれ込む。

ハリルジャパンは舞台を敵地・ジッダに変えて、サウジアラビア代表と対峙する。チャーター便を利用するとはいえ、日本から10時間を軽く越える長距離移動を強いられる。加えて、6時間もの時差がある。

午後8時半のキックオフながら、この時期のジッダは日中の平均気温が37度に達し、紅海沿いという立地条件もあって湿度も70%を超える。過酷な消耗戦が展開されるのは、まず間違いない。

中4日というスケジュールを考えても、ぜがひでもオーストラリア戦で勝利を収めたい。すでにチケットは前売り段階で完売。ホームを青く染めたファンやサポーターと一緒に、至福の喜びを分かち合いたい。

しかし、オーストラリアには過去のワールドカップ予選で5分け2敗と一度も勝てていない。昨年10月11日にメルボルンで行われた第4戦でも、開始早々に先制しながら1‐1のドローに終わっていた。


劇的に変わったハリルジャパン内の序列


そのアウェイ戦で、昌子は代表メンバーに選出されていなかった。センターバックとして先発フル出場を果たしていたのは、吉田麻也(サウサンプトン)と森重真人(FC東京)だった。

リザーブに名前を連ねていた丸山祐市(FC東京)は、後半終了間際に代表デビュー。アントラーズでコンビを組む2歳年下の後輩、植田直通はベンチに座ったまま試合終了の笛を聞いた。

この試合で左サイドバックを務めた槙野智章(浦和レッズ)を含めた、ハリルジャパンにおけるセンターバック争い。約10ヶ月あまりがすぎたいま、序列は鮮やかに変わりつつある。

吉田がリーダー格なのは変わらない。しかし、6月シリーズで外れた森重は7月2日のセレッソ大阪戦で左腓骨筋腱を脱臼。全治約4ヶ月の大けがを負い、シーズン中の復帰が絶望となった。

そして、その6月シリーズで吉田の相棒に指名された昌子の国際Aマッチ出場数は、シリア代表との国際親善試合、イラク代表とのワールドカップ・アジア最終予選第8戦をへたいまも「4」しかない。

シリア戦に出場した昌子源
(c) Getty Images

一方でオーストラリア、サウジアラビアとの連戦へ招集された他のセンターバック、植田と三浦弦太のそれは「0」のまま。槙野は今回、左サイドバックを長友佑都(インテル・ミラノ)と争う形になっている。

必然的に昌子の脳裏に「自覚」や「覚悟」の二文字が浮かぶ。1992年生まれの「プラチナ世代」から、アントラーズでも同期だったMF柴崎岳(ヘタフェ)ら、自身を含めて5人が招集されたことも刺激になる。

「今回の代表で言えば1992年生まれ組が多いと思うし、僕らよりも下の世代のナオ(植田)や(三浦)弦太、(久保)裕也や(浅野)拓磨らもおる。何て言うのかな、代表のなかで少しずつ下の世代が増えているのはすごくいいことだし、これを今回だけではなく、ずっと続けていければと思う」


すでに34試合でフル出場している今シーズン


柴崎だけでなくMF小林祐希(へーレンフェーン)、FW武藤嘉紀(マインツ)も海外へ羽ばたいた。初招集されたFW杉本健勇(セレッソ大阪)は、J1の得点ランキング2位の14ゴールと大ブレーク中だ。

今回のシリーズでは選外となったFW宇佐美貴史(アウグスブルク)らを含めた、今年で25歳を迎える「プラチナ世代」のなかで、最も濃密な経験を積んでいるのが昌子と言えるかもしれない。

J1で最多タイトルを誇る常勝軍団アントラーズで、歴代のディフェンスリーダーの象徴でもある「3番」を託されたのが2015シーズン。まだ22歳という若さに、クラブが寄せる期待が凝縮されている。

今シーズンはここまでJ1で24試合、決勝トーナメント1回戦で広州恒大(中国)に屈したAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の8試合の計32戦で、アントラーズではただ一人、先発フル出場を続けている。

常勝軍団アントラーズで先発フル出場を続ける
(c) Getty Images

6月からはハリルジャパンのセンターバックという肩書も加わった。常にベストのコンディションを整え、出場停止につながるカードの類をもらわず、それでいて極力失点を少なくしてチームを勝利に導く。

困難を伴う仕事であることはわかっている。それでも現役時代はセンターバックでプレーし、日本代表にも招集された経験をもつアントラーズの大岩剛監督は熱きエールを送る。

「ちょっと無理をしてもらっているし、すでにかなりの試合数になっているけれども、それでも頑張ってほしい。いまのこの壁を越えれば、またひと回りもふた回りも大きくなれると僕自身は思いながら見ているとういか、見守っていますけどね。

日本代表でも試合に出はじめた。代表ではいろいろなことがあるけれども、そういう部分を含めたハードさは今後に必ず生きてくる。海外の選手たちは毎週のように過酷な日程をこなしている。彼らのレベルに達する壁だと思ってほしいですね」


サウジアラビアが負けたという望外の吉報


埼玉県内で行われている代表合宿に、27日の初日から参加している。前夜にはオーストラリア戦の前哨戦といってもいい対決を無失点に封じ込め、アントラーズの首位固めに貢献した。

2位で追走するセレッソ大阪のホーム、ヤンマースタジアム長居に乗り込んだ26日のJ1第24節。相手の1トップは187センチの杉本が務め、途中から183センチのリカルド・サントスが加わった。

「オーストラリアは体も大きいし、(杉本)健勇やリカルド・サントスに近いと思っていた。ただ、クロスをあげられたときの対応などは、自分のなかでもう少し高めていきたい。自分より明らかに身長が高い相手でも、最後は必ず体をタイトに寄せるとか、最低限そういうことができるように準備したい」

183センチの昌子は186センチの植田とのコンビで制空権を譲らず、カウンターによる地上戦をも制した。関西特有の蒸し暑さのなかで流した大粒の汗が、むしろ心地よく感じられた。

「何をしていなくても汗をかいてしまうような苦しい気候のなかで試合をして、代表戦が行われる埼玉へ戻ることができる。その意味では、ちょっとだけ涼しさを感じられるかなとも思っている。

代表の海外組もそうだし、オーストラリアも季節が逆なので、この蒸し暑さには苦戦するのかなと。だからこそ、Jリーグでプレーしているアドバンテージを生かして、僕ら国内組がより頑張れたらと」

30日未明には、サウジアラビアがUAE(アラブ首長国連邦)に逆転負けを喫したという吉報が飛び込んできた。勝って暫定首位に立ち、日本とオーストラリアに重圧をかける青写真は脆くも崩れ去った。

生きるか死ぬかの正念場では、誰もがプレッシャーとも戦う。要は国を背負う十字架を、力に変えられるかどうか。アントラーズの屋台骨を支えてきた濃密な経験がいま、問われようとしている。

《藤江直人》

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