高萩さんがメインで栽培しているのはアスパラガスだ。他にも、カブ、大根、生姜など多品目の野菜を栽培し、今年の秋からは蓮根栽培にも挑戦している。アスパラガス以外の作物は、全て無農薬栽培。土作りをきっちりとすることで、農薬を撒かなくても病害虫が出ないように工夫している。
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農作業中の高萩さん。アスパラガス以外の野菜は、全て無農薬栽培。
そんな高萩さんと筆者はひょんなことから知り合いになり、ひょんなことから一緒に山に登ろうという話になった。
茨城県屈指の低山ハイカーと自負する筆者は、高萩さんの登りたい山のリクエストに応えることにした。高萩さんの口から出た山名が「鶏足山」であった。城里町のシンボルと言えるこの山を、町民として一度は登ってみたいという。
そのような訳で、高萩さんとの鶏足山登山を決行した。農業を生業としているだけあって、高萩さんは健脚であった。筆者が最初の登りでぜいぜいと息を切らしているのに対し、高萩さんはそれほど苦ではなさそうに見受けられた。
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高萩さんは、農業と趣味の城巡りで鍛えた健脚を披露してくれた。
山の初心者である筈の高萩さんに、負けられないという思いから、切らした息を無理やり繋ぎ留め、さも平気そうに振舞ってはいたが、「そろそろ休憩しましょうか」という言葉が最初の20分で何度も口から出そうになった。幸いにも鶏足山は最初以外には急な登り坂はなく、その後は「県内屈指の低山ハイカー」としての面目を保つことができた。
高萩さんの健脚の秘訣は、やはり日頃の農作業にあるのか? 体力面では、日頃の農作業によるところが大きいとは思うが、山に登る姿が様になっていた。山を歩き慣れた様子だったのだ。気になった筆者は、下山後にその謎を突き止めた。果たしてその秘訣は高萩さんの趣味にあった。
高萩さんの趣味は、城巡りである。城巡りと山登りは、何ら関係がなさそうに思えるが、そんなことはない。むしろ、城巡り=山登りの場合だってあるという。
「城にも種類があって、戦国時代よりも前に造られた城の多くは山城なんです。それで、結果的に登山になっていたということが多々ありました」
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「山登りって身構えてしまうところがありましたけど、登ってみてそのイメージがなくなりました」と、高萩さん。高萩さんは取材の後日にも、再度鶏足山に登ったという。
なるほど、健脚の秘訣はそこにあったのか。高萩さんがこれまでに巡った城の数は、40以上。姫路城などの人工的な美しさを持つ城から、荒々しい美しさを持つ山城まで、実に様々な城を巡ってきた。では、登山のような山城巡りと比べ、今回の鶏足山登山にどのような印象を持ったのだろうか?
「その場で感じたこと、楽しいとか綺麗とか、そういうことを口に出しながら登れるのは自由ですよね。山城ですと、過去に誰が建てたとか住んでいたとか、どんな戦いがあったとか、先入観が混じってしまうので」
どうやら、高萩さんに山を楽しんで頂けたようだ。