中国・武漢で8月上旬に開催された東アジアカップ。3試合すべてに先発フル出場し、ベルマーレ平塚時代から数えて17年ぶり、チーム名が湘南ベルマーレに改称されてからは初めてとなる国際Aマッチ出場者となったDF遠藤航に対して、こんな言葉をかけていたという。
「いいサッカーをしているじゃないか」
■ハリルホジッチ監督が注目する湘南ベルマーレ
各チームとも8試合を終えたセカンドステージで、ハリルホジッチ監督は3度もベルマーレが絡むカードに足を運んでいる。そのなかには、敵地で行われたヴィッセル神戸戦も含まれている。
そして、8月22日の川崎フロンターレ戦を視察した後にはこんな言葉を残し、収穫ありをにおわせている。
「かなり見どころのある試合だった」
遠藤だけではない。同じく東アジアカップに招集したフロンターレのDF谷口彰吾、代表候補合宿に呼んだことのあるFW杉本健勇、U‐22代表の攻撃を司るMF大島僚太もフル出場していた。
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遠藤航
何よりも、目の前で繰り広げられた白熱の攻防に、代表監督うんぬんよりもサッカーに携わる者のひとりとして深い感銘を受けたのではないだろうか。
キックオフからわずか15秒で喫した失点に下を向くことなく、チームの生命線である「前への推進力」から2ゴールを奪取。会心の逆転勝利でセカンドステージ4位タイに浮上した90分間を、ベルマーレを率いる曹貴裁(チョウ・キジェ)監督はこう総括している。
「試合終了のホイッスルが鳴るまでひとつひとつのプレーにエネルギーがあって、何か映画を見ているようなシーンもたくさんあったというか。本当にスリリングで素晴らしいゲームだった」
■湘南ベルマーレの目指すサッカー
いまではすっかり「市民権」を獲得し、曹監督、眞壁潔会長以下の経営陣、フロントスタッフ、選手たちはもちろんのこと、ファンやサポーターも違和感なく口にする言葉がある。
「湘南スタイル」
曹監督の1年目だった2012年シーズン。ある試合後の公式会見で、指揮官が「湘南スタイル」と発言したことが起源とされている。果たして、どのようなサッカーを指しているのか。
今年2月に発表した初めての著書『指揮官の流儀 直球リーダー論』(角川学芸出版刊)のなかで、曹監督はベルマーレが標榜するサッカーをこう特徴づけている。
・攻撃から守備、守備から攻撃への切り替えが速い
・攻守両面において相手よりも常に人数をかける
・パス全体に占める縦パスの割合を4割近くにする
曹監督自身が「方法論こそ異なるが、他のチームの監督も最終的には同じことを考えているはずだ」と断っているように、世界的なサッカーの流れのなかで目新しさを謳っているわけではない。縦への推進力を重視するイズムが合致するからこそ、ハリルホジッチ監督も好意を寄せているのだろう。
そして、誰よりも曹監督自身が、単なるピッチ上における戦術やフォーメーションにとどまらない、地域全体を巻き込んだ普遍的なテーマを「湘南スタイル」という言葉に込めている。
【湘南ベルマーレが急成長を遂げている理由 続く】