■J1への切符をかけたギリギリの戦い
味の素スタジアムのピッチに、ジュビロの一員として立つのは2度目。もっとも、昨年4月26日のJ2第9節と今年11月1日の同第39節とでは、小林を取り巻く状況のすべてが異なっていた。
ジュビロの指揮官はペリクレス・シャムスカから名波浩監督へ、ヴェルディのそれは三浦泰年からいまも慕う冨樫監督へ交代。そして、自身のポジションもボランチからトップ下へ移っていた。
キックオフは午後4時。この時点で、先にキックオフされた一戦でアビスパ福岡が勝利。怒涛の5連勝で勝ち点を「73」に伸ばし、ジュビロの「72」を上回って暫定2位に浮上していた。
つまり、ヴェルディに苦杯をなめれば、ジュビロはJ1へ自動昇格できる2位から陥落する。果たして、キックオフ前の時点で3位から6位のチームに与えられる、J1昇格プレーオフ切符獲得への可能性をつなぎ止めているヴェルディが序盤はペースを握る。
明治安田生命J2リーグ 39節 vs東京ヴェルディ
Posted by ジュビロ磐田 on 2015年11月1日
試合が大きく動いたのは前半24分。ペナルティーエリア内で相手GKカミンスキーと交錯したFW高木大輔が、体勢を崩しながらこぼれ球に反応。無人のゴールへ放たれたシュートを右手で弾き落としたとして、DF森下俊に問答無用のレッドカードが提示された。
絶体絶命のピンチは、MF南秀仁のPKをカミンスキーが必死に伸ばした左足で弾き返して事なきを得た。しかし、同41分にはFWジェイがふくらはぎに異変を訴えてベンチへ退いてしまう。
明治安田生命J2リーグ 39節 vs東京ヴェルディ
Posted by ジュビロ磐田 on 2015年11月1日
一人少ないハンデを抱えた上に、20ゴールでJ2の得点王ランクを独走する絶対的なエースストライカーもピッチから消えた。先発陣で最年少の20歳、ボランチの川辺駿の脳裏にはこんな言葉がよぎったという。
「正直、厳しいかもしれない」
両チームともに無得点で迎えたハーフタイム。絶対にあきらめちゃいけないと、2番目に若い23歳の小林が吠えた。
「無理に攻め上がるとか、全員でワーッといくシーンは極力減らすけど、それでもタイミングを見ながらみんなでリスクを冒そう」
そして、後半開始前に円陣を組んだ際に、以心伝心の関係を築いている川辺にこう耳打ちした。
「オレら2人が(勝敗の)キモになるから。ワンチャンスをものにしよう」
イメージが現実のものとなったのは後半4分。図らずも、小林が敵将とタッチを交わした直後だった。
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